「はい我が母。もちろんわかっています」

「……では問おう。何故、螢はそんなに嬉しそうな顔をしているのだ?」

「我が母が叱って下さるのは、我を想って下さってのことだと知っているからです」

「………まあ…間違ってはいないのだが…反省はしているのだろうか?螢?」

「はい。我が母」

申し訳ありません。と謝る螢からは確かに反省の念は感じられたが「危ないからもうしない」ではなくて「母が仰るからもうしない」での謝罪の言葉だった。

根本がわかっているのかいないのか。白髪の彼女は常に疑問を抱いている。

……因みに、同居人の三人にも「螢はマザコンだ」と散々言われているのだが、

残念ながら白髪の彼女は全く気付いていない。

よてり、と手を離してしまったらまた転んでしまいそうな我が子をすとん、とその場に座らせた。

―――螢は、足が悪い。

動かせない、と言うほどではないのだが、誰かの手を借りないと歩けない。歩けてもその一歩一歩はとてもとてもゆっくりで不安定だ。走ることなど、到底出来ない。

医者である友人にも診てもらったが………原因は、不明。

とにかく、歩けないわけではないから適度に動かして筋肉が固まってしまわないようにと言われているので、教わった通りのマッサージや、時折手を引いてゆっくりゆっくりと歩かせるようにはしている。

「螢?母に何か急ぎの用でもあったか?」

優しく支えながら白髪の彼女は螢へ問うた。

螢は約束を破るような子ではないことは母である白髪の彼女が一番よく知っている。

何か用があって来たのだろう。と白髪の彼女は至る。





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