私を呼ぶ彼の声をもう思い出せない。夢に出てくる彼は優しく微笑むし、確かに何か話している。けれどそれが私に届くことはなくて、私はいつも泣きながら謝る。彼はとても寂しそうに私の額にキスして消える。


「ひさしぶりだなぁなまえ」


そうか、君はそんな声で、そんな愛おしそうに、私の名前を呼んだんだったね。どうして忘れることが出来たんだろう。君が好きで今まで進めなかったというのに。


「なに泣いてんだぁ」
「何でいんの…意味わかんない」
「なにいってんだ、ずっといたぞぉ」
「え?」
「死んでからずっとなまえの傍にいた」
「えっそれはキモイ」
「ゔお゙ぉい!!!雰囲気台無しじゃねぇかあ!!」


耳を裂くような大声。鬱陶しいとあんなにも思っていたのに。どうして今はこんなに暖かくなるんだろう。


「うるさい、近所、迷惑」
「お前にしか聞こえねぇから大丈夫だぁ」
「……………え?」
「当然だろぉ、オレはもう死んでるんだぜぇ?」


少し眉をひそめて笑う。
二度と君にそんな顔をさせまいと、あんなにも強く思ったのに。


「なまえがわかるんだ、それで十分だぁ。他に未練なんてねぇよ」
「でも何で急に見えるの?」
「さぁなぁ」
「さぁなぁって……あっお腹は?減らない?」
「別に腹はへらねぇが、なまえのアマトリチャーナが食いてぇ」
「…うん、作る」


朝あんなにがんばってセットしたのに、もう髪はぴょんぴょん跳ねていた。スクアーロが頭を撫でて自然と顔が近付く。触れた唇に温度はないのに、なぜか暖かく感じて、私はやっぱり涙が出た。




「あっパスタ切らしてたわごめん。芽の出たジャガイモでいい?」
「おいお前ほんとにオレのこと好きなのかぁ?」




prev:next





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -