菅原中編 | ナノ

新学期が始まって春が暖かさを増した。薄紅色から若草色に景色が変わり始めて教室の雰囲気も緊張から親しみに変わりかけている。
私はというと仲のよい3人が安定してつき合ってくれているおかげで今年は4月に泣かずに済んだ。


「キヨご飯食べよー」
「……ん」
「どした、具合悪い?」


キヨの顔はなんとなく火照っていて目がとろんとしている。いつもと口数は変わらないけどキヨは意外と食いしん坊で、お昼のときはもうちょっとはしゃぐ。
キヨの額に手を当てるとしっとりと湿っていて非常にあったかかった。


「熱、あるんじゃない?」
「……大丈夫」
「いやいや大丈夫じゃないって、帰んな」
「だめ、部活、いま大事ときなの」
「大事なときだからってキヨが無理しなきゃなわけ?マネージャー他にもいるでしょ」
「え、いないよ」
「え、いないの!?」


古豪とまで言われた烏野バレー部にまさかマネージャーが一人とは。いやでも1日くらいマネージャーなくても平気だろ。


「とにかく今日は帰りな。大事な時期なら余計、キヨの熱移しちゃ大変でしょ。三連休で治せばいいよ」
「遠征なの、明日から」
「え!?」


つまりキヨ抜き、マネージャー抜きで遠征かぁ。それはそれは、


「「まずいな……」」


私の呟きに誰かの声が重なった。後ろを振り返ると澤村が眉間にしわを寄せて腕組みして立っていた。


「澤村、ごめん遠征には行くから」
「いや、みょうじの言うとおり無理はさせられない。ただ遠征に清水がいないとなると困ることが2つある」


澤村はなにやら神妙な面もちでVサインをつくり、なぜか私に説明し始めた。その横で菅原はふわふわ笑っている。


「1つ、マネージャー業務をしてくれる人がいない」
「はぁ」
「2つ、田中と西谷のやる気が半減する」
「は?」
「田中と西谷は烏野の戦力なんだ、清水のことが大好きなんだ。だから清水にかっこいいところを見せるために燃える、だがいないと落ち込むだろう」
「へぇ」
「そこでだ、みょうじ清水の代理をやらないか」
「やらないよ」
「はや!」


ツッコミを入れたのは菅原だ。
当たり前でしょいやだよ。特に容量がいいわけでもないし、マネージャーなんてやったことないし。なにより戦力2人の志気を高めるほどの容姿がない。キヨの代わりなんて無理すぎる。そのことを澤村に説明したら、大丈夫だと若干圧力気味でいわれた。


「大丈夫だ、みょうじは自分で思ってるより美人だし、とにかくいてくれればいいから」
「なまえ…私からもお願い、行ってあげて」
「キヨ、」
「なまえにならお願いできる」
「わかったやるわ」


ここでもまた菅原がさっきと同じツッコミを入れた。キヨにそんな顔でお願いされたら断れない。ありがとう、と微笑むキヨはやっぱりこの上なくかわいくて、キヨが大切にしてるバレー部を支えることに少しわくわくしたりもした。


「じゃあ今日の放課後色々説明するから」
「わかった、とりあえずキヨ送ってくる」
「清水おだいじにな!」
「ん、ありがとう澤村菅原」



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