菅原中編 | ナノ

しんしんと降り積もる雪が二人の音を隠す。吐く息は白く小さい。いつもなら迷わず繋がるはずの右手がコートの袖で行き場もなく揺れている。少し前からだ、こういう空気を感じていた。一緒にいたい、隣にいないと寂しい。それなのに二人きりの空間は苦しくてどうしてか言葉が出てこない。

相変わらず雪はやまなくて、二人を残して白い世界が広がっていく。ようやく触れた彼の左手は暖かくて、私の心はバカみたいに喜んだ。彼の顔を見上げて彼の瞳の中にいる自分を見た。私たち二人の顔はとてもよく似ている。好きなのに何を伝えあって何を確かめ合ったらいいのかわからない。今まで私たち、何やを話して笑っていたんだろう。その頃を「幸せ」とだけ記憶して、今を苦しいと勘違いしているのだろうか。

右手から伝わる温度は泣いていた。
彼の顔を見ても涙は流れていなかったけど彼はきっと泣いていたんだろう。細く震える声でどうにかこうにか呟いた一言は、白に飲み込まれて、彼の温もりは一枚の白に奪われた。





心臓の鼓動が異常な程に鳴り響いている。クラス替えなんてなければいいのに、心底そう思う。友達が少ない私にとって、この行事は地獄である。


「なまえ、おはよう」
「キヨ、おはよう」
「よかった、同じクラスだよ」
「えっほんと?」
「うん、二組。澤村と菅原も一緒」
「へぇ、東峰だけ別なの?可哀想に」


半笑いで言いながらもキヨと一緒で本当によかった。清水潔子は美人の親友でバレー部のマネージャーをしている。菅原とは私の元彼で、バレー部副主将、澤村はバレー部主将で去年も同じクラスだったのでよくしゃべる。なかなかよいクラスだったようだ。


「菅原も一緒」
「うん、さっき聞いたけど」
「よかったね」
「よかった、かな?別に引きずってないけど?」
「………ふぅん」


なんなのその含みのある微笑は。なにやっても絵になる美人というものは本当に腹立たしい。実際引きずってないんだから仕方ない。いや、いい彼氏だったとおもいます、けど、終わったものは終わったし。その後気まずくなって話さないなんてこともなく普通に友人として交際している。どうしてこうこのくらいの年齢の男女は、「恋人」になったとたん、どうしていいかわからなくなるんだろう。何はともあれ、11ヵ月付き合って別れた元彼と同じクラスだからって別に期待とかはしない。そういうの興味なさげなキヨが珍しい反応だと思った。

教室に行くと菅原と澤村が談笑していて、私たち二人を見ると顔を明るくした。


「澤村今年もよろしくー」
「オレは!?」
「菅原、今年はよろしくー」
「清水よかったな、みょうじと一緒で」
「…………うん」
「あんたかわいいんだからそういうのやめてよ!!かわいいよ!!」
「なまえ相変わらずだな」
「キヨがかわいすぎるから私に彼氏ができないんだよー」
「なまえもかわいいべー」
「はいはいありがとう」
「「(ツッコミにくいよ………)」」






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