契りおきし 
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テストの日程が発表された、と誰かが言った途端多くの生徒がざわめき、立ち上がり廊下に出て行く。高等部に入って初めてのテストにみんな不安が隠せない。とは言っても中等部の頃の科目に加え、各コース特有の科目が二、三増えるだけだが。まぁその専門科目が恐ろしいことを私たち生徒はよく理解していた。できれば最終日に持ってきてほしいところだけれどそういう生徒が望むことをしないのが学校というものだろう。


「お前は見にいかねぇのかぁ?」
「いたい」


数学の教科書で私の頭を叩いたのは入学式以来よく話すようになったS・スクアーロである。私の机に尻を置いて私を見下ろしている。


「行くけど後で。今混んでるだろうし」
「よかったら僕が教えようか」
「ミハエルくん」


会話に入ってきたのは同じ科のミハエルくんだ。金髪碧眼の紳士的な美少年、女子には当然のごとく人気。


「今見てきた所なんだ、よかったら見る?」
「いいの?ありがとう」


爽やかな笑顔でメモを差し出すミハエルくんをなぜかスクアーロはやたらと睨んでいる。断る理由もなく受け取る。ミハエルくんは頭がいいと話題だったけどさすがだなって感じだ。メモのきれいな字を見て思った。


「ミハエルくんありがとう、助かった」
「いえいえ。看護実習論が初日なのは痛いよね」
「ね、お互い頑張ろうね」
「うん、負けないよアキさん」
「お手柔らかに」


ミハエルくんが席に戻っていくのを見るスクアーロはなんだか不機嫌だ。なんだこいつさっきから。


「スクアーロ?どうしたの?」
「ああいう奴は好かねぇ」
「なにそれ?」
「お前あんな奴と仲いいのか?」
「あんな奴って…仲いいわけではないけど、わりと話す方かもね」
「お前友達すくねぇもんなぁ」
「スクアーロには言われたくないけど」
「とにかくあんまりあいつは信用しないほうがいいと思うぜぇ」
「てかさ、あんたって勉強出来るの?」
「出来るように見えるかぁ?」
「まったく」
「やれば出来ると思うんだけどなぁ、やる気が剣以外にむかねぇんだぁ」
「……勉強も出来ないといいファミリーに入れないんじゃない?どこに入りたいとかないの?」
「オレはヴァリアーに入るぞぉ」


何言っちゃってるんだろうこいつ。初めて会った時から破天荒だなぁと思っていたけど当たり前みたいな顔して「ヴァリアー入る」とか言ってるけれども、ヴァリアーって暗殺部隊だよね?実力はともかく頭も相当良くなくちゃだめなんだよね?


「頭よくないのによくそんなことを平然と…」
「そういうお前は頭いいのかぁ?」
「いいよ!!ぶっちゃけいいよ!!」
「じゃあ教えろ」
「は?」
「今度の中間、オレに勉強教えてくれぇ」
「それが人にものを頼む態度か?おい」
「…教えてくだ、さい」
「よろしい」


スクアーロが私に懇願したところで丁度チャイムが鳴った。中間までの二週間、放課後スクアーロに勉強を教えることを約束して、スクアーロは席につく。なんか、あいつ、手ごわそうだな。




131124


 
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