ひさかたの 
[ 3/5 ]


「なんで私がこんなこと…」
「あんだけでかい声出せば目立つだろぉ」
「え、あなたのせいですよね!なんか私が悪いみたいになってるけどあなたのせいですよね、スペルビ・スクアーロ!!」
「あーうるせぇうるせぇ。早く手動かせぇ」


私たちはあのあと学園長室という随分大きな部屋に呼び出され、随分大きいプール掃除を罰として言い渡されました。悪いのはいま横でデッキブラシをかけているこいつなのだが、なぜ私までこんなことを…


「というか暗殺の学校にプールは必要あるのか」
「暗殺者が泳げねえなんて格好悪いだろぉ」
「そう?暗殺者って泳ぐ機会ある?」
「豪華客船沈めるときなんか必要じゃねぇか?」
「え?あ、え?」
「豪華客船…」
「そうだね必要かもね!!」


なんだこいつ豪華客船沈めんの夢なのか?否定しようとしたらすごいションボリされた。


「まぁ医療者コースさんにはわかんねぇよなぁ」
「まぁ、目指すことが違いますから。あなたは命を奪うために技を磨くけれど私は命を救うために技術を身につける」
「…別にオレは見境なく殺してぇわけじゃなぇぞぉ。オレが勝負を挑むのは同業者だけだぁ」
「責めてるわけじゃないです。殺しも立派な職業ですから。ただ、私は剣が好きじゃないだけで」
「あぁ!?ケンカ売ってんのかぁ!」
「違います、自分が死ぬとき剣はやだなってことです!」
「なんでだぁ」
「銃がいいんですよね、殺されるなら。一瞬で打ち抜いて楽に死にたい」
「オレなら楽に死なせてやれるぞぉ、剣でもなぁ」
「相当自信があるんですね」
「あぁ、オレは世界一の剣士になる男だからなぁ!」


迷いのない目だなぁと思った。あんなにこいつに対して腹を立てていたのにどうでもよくなってきた、というか逆に応援したくなってきた。怖がられてるからもっと性格ひん曲がったやつなのかと思ったけどそういうことじゃないんだ。自分の目標に対して真っ直ぐすぎて、常識的じゃない過程を辿ってるだけなのね。


「意外と純粋なのね、あんた」
「バカにしてんのかぁ?」
「かしこくは見えないよね」
「うおぉい!!」
「でも私あんたみたいな人嫌いじゃない、礼儀はなってないけどかっこいいよ!」
「うぉっ、おぉ…」
「…照れたの?」
「ちげぇえ!」
「意外と純情なのね」


かっこいいという言葉に照れたのか随分焦って顔を赤くしている。スレてるようで純情ね。おもしろい。


「暗殺者コースに知り合いが出来てラッキー。これからよろしくね、スクアーロ」
「…おう。オレもラッキーだ、医療者コースに知り合いが出来て」
「ふふ!あ、クリーニング代は払ってよね」
「チッ…」


私が差し出した右手をスクアーロが握ろうとする。近づいてきたスクアーロの胸あたりを思いきり突き飛ばした。スクアーロは一瞬何が起きたか分からないような表情のあと、状況を理解したのかやばい、とお前覚えてろよの混ざり合った表情を浮かべて後ろからちょっと汚いプールに落ちてった。



礼儀は私がたたき込んであげよう



「家庭教師ドクターアキ?」
「てめ、調子に乗るなよぉ!!」
「え、」


足を掴まれてずるりと落ちた。
ざまぁみろと笑う彼に心臓が一回鳴った気がした。









 
bookmark back



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -