夜をこめて 
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まずは二人の出会いから。
17歳の春。


「あーと、取れない…」
「どれだぁ?」
「たぶんその深緑のやつ。」
「ほらよ。」
「ありがとう。」


ゆっくり桜を見る予定だったのを思い出話に変更して早々に帰宅した。私たちはアルバムをあらかた出してきて一番古いアルバムを探す。


「あ、あった!これこれ!」
「どれ…」
「わーママン髪、みぢかいっ!」
「これはねースクアーロと会う…ちょっと前の写真かな。」
「いくつの時だぁ、これ。」
「高校二年かな、たぶん。」
「オレと初めて会ったのは三年かぁ。」
「そうそう、三年の四月…」



確かあの春は桜の開花が早くて入学式にはもうほぼ散ってしまっていた。高校三年生になった私は憂鬱な気分で始業式に臨んでいた。


「ただいまから、平成××年度始業式を始めます。」

私が通う学校にはマフィア育成学部と一般学部が同じ学園で生活する特殊な場所。一般といってもマフィアのファミリーに属する非戦闘員養成のための学部だから、結局ここに通う人たちはほとんど全員が卒業後どこかしらのファミリーに入る。私は一般の保健医療学科にいる。目指すは医者。ファミリーお抱えの医者って儲かるからという不純な動機。

学園長のつまらない話が延々と続いている。周りの生徒たちがざわつき始めた。私はちょうどうとうとし始めて、これから30分は続くであろう話の間仮眠でもとろうと意気込んでいた。

ごん、と私の肘に振動。突然のことにびっくりして目が覚めた。素早く顔をあげると鋭い目と視線がかち合う。ぶつかったところにを確認すればブレザーにべっとりと赤いもの。無理やり心を落ち着けて彼をじっくり見れば彼は白いシャツだったと思われるものを赤く染めていた。

周りは学園長の話などそっちのけで返り血まみれの彼を見ている。ていうか、ブレザーに血ついちゃったんですけど。なんなのこいつ。しかも、こっち見てんじゃねぇ的な感じでガン飛ばしてくるけどそれこっちの台詞だからね。謝れよ、おい謝れよ。


「なに見てやがる」
「あなたが私のブレザー汚したから、いつ謝るのかと思って」
「あ゙ぁ?」
「…謝らない気じゃないですよね」
「………」


鋭い目で私を睨んできた少年に、正直苛立ちしか感じていなかった。いつもの私はそこまで怒りっぽい方でもないんだけど、自分が正しいのに泣き寝入りは出来ない。


「謝らないんですか、私の制服汚しておいて。失礼な方ですね」
「うるせぇよ、さっきから」
「…クリーニング代」
「あ?」
「さっきからなんなんですか?どう考えても私悪いことしてないですし、すぐ謝ればいいものをさも自分は悪くないかのようにこの野郎!クリーニング代くらい払えって言ってんのよカス!」


あ。体育館にいる生徒ほぼ全員の視線が私に集まる。学園長も小さい目をまあるく見開いてこっちを見てた。
や、やってしまった…というかそもそもこいつが悪い気がする。横の銀髪少年を見るとぽかんと口を開けて私を見てた。私と目が合うといきなりにぃっと笑った。


「女のくせにいい度胸だなぁ!このオレが誰だか分かっていってんのかぁ?」
「はぁ?あんたなんて知らないわよ、どうでもいいけどクリーニング代払って。そして今朝会中だからちょっと声抑えて!」
「知らねぇのかぁ、なら教えてやる!オレはスクアーロ、S・スクアーロだぁ!」


スクアーロ?あぁ最近噂の少年剣士か。すごい強くて将来有望らしいけど本人は「とにかく強いやつと闘いたい」とか言ってマフィアからの引き抜き断ってるっていう、変人か。なんだ実際会ってみたら変人ていうよりただのバカじゃない。常識ないだけじゃない。


「で、S・スクアーロだからって人の服血で汚していいことはないでしょうよ」
「ちっ、うるせぇ女だなぁ。まぁいいオレが洗ってやる。脱げ」


言葉より先に思わず手がでた。思いきりぐーでいったのだがやはり噂になる強さは伊達じゃないようであっさり受け止められた。


「ゔお゙ぉい!オレに攻撃当てるなんて100年早いぜぇ!医療者コースさんよぉ」
「そんなことより声おおき「そこの二人いい加減にしなさい!!静粛にして!朝会終わったら職員室来るように、いいね」


最悪だ。頭を抱えてうなだれる私の横でニヤニヤ薄笑いを浮かべる銀髪。朝会終わったら職員室の前に一発殴る。あきらめない殴る。




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