08
「いってきます!」
「いってらっしゃい、山本くんによろしくね。」
「うぃー。」
ヴァリアーが来るまであと約五日。クッキー作りもちゃんと出来るようになった。おいしく出来たクッキーを適当なバスケットに詰め込んで今日は山本を激励にいってきます。私の出来るお手伝いはそんなことくらいだから。「そんなこと」とか言っても私がクッキー作れるようになったのはかなりのことだけどね!
「山本ー調子どう?」
「おぉーなまえさん!まあまあっすね。」
「ちょっと休憩しない?」
竹刀を振っていた山本は防具を外して床に胡坐をかく。私もその横に胡坐をかいて座る。
「さぁ食べなさい!」
「なんすかこれ?」
「クッキー、私が作った!」
「まじっすか!大丈夫…なん「大丈夫だよ。」
いただきます、とひとつ口に含む。一応京子からOKをもらったものの、不安なのに変わりはない。山本の顔色をうかがうと、それに気づいた山本はクッキーを飲み込んで、にかっと爽やかな笑顔を向けた。この笑顔にファンはやられてるわけね。
「この女ったらしー。」
「ちがうっすよ、何言ってるんすか。」
「そうやって女の子の心を鷲掴んでるのねー。」
「ハハッ本当に掴みたい相手は掴めないのなー。」
「本命?いるの?」
「言わないっすよ!」
「つまんないの。」
へぇ、意外だな。山本に好きな人がいるなんて。私もひとつクッキーに手を伸ばす。山本もぽりぽりとつまみながら私を見た。
「なに。」
「…俺、一回しか親父に型、教わらなかったんだ。」
「…………」
「たった一回の伝受であのロン毛に勝てるのかなって、不安になっちまってな。」
「でも勝たせたいから、剛パパも教えたんでしょ?」
「…………」
「それに山本は努力出来るから。だから自分で考えて、技を掴んだら、その方が山本が強くなるってそう思ったんだよ。」
「…やっぱなまえさんすごいのな。」
「それほどでも。」
「別に照れなくてもいいのなー。」
「あっねぇねぇちょっとやって見せてよ!」
「えぇ?」
「ほら早く早く!」
促すと山本は今のところ一番得意な篠突く雨を見せてくれた。竹刀を握る山本は今まで見たことないような真剣な顔だった。
「いいじゃん、その顔。私好きだよ。」
「なっ…」
クッキーはあげるから、それだけ言い残して私は山本の道場を出た。スクアーロさんとどれだけ勝負出来るのか、楽しみだね。
きっと素敵な戦いになるよ
「ったくあの人は…俺の気持ちなんて全然気づかないのなー。」