05
次の日は日曜だった。それでも了平は朝早く、というより夜遅くからコロネロくんと修業に行ってしまった。これからはみんな学校そっちのけな予定らしい。
私はというと、お手伝いを頼まれたは良いものの、何をしたらいいのか分からず、とりあえず早起きをしてみた。私、見ての通り高血圧だから早起きは得意なの。
「どーしよっかな…」
一人呟くと、ふと目に止まったのは台所。お弁当、でも作りますかね。
軽い気持ちで始めては見たものの、私は恐ろしい才能の持ち主だったらしい。とてもお弁当のおかずとは思えない、破壊的な黒炭がフライパンの上に残っていた。米だけはうまくいって、おむすびだけは完璧である。
大きくため息をついて、とりあえずお母さんに申し訳ないので黒炭だけはきれいに落とすことにした。お母さんがお味噌汁作りをいつも京子に頼む理由がわかったわ。いいよ、私はこれからもお風呂洗いと洗濯係で。
そうこうしてるうちに京子が起きてきた。私が長袖Tシャツにスウェットという色気のない格好なのに対して、前ボタンのかわいいパジャマを着た京子は朝から目の保養である。
「お姉ちゃん…?ずいぶん早いんだね。」
「うん。あ、ねぇ京子、今日午後ひまなら簡単なお菓子作りとか教えてくれない?」
「いいけど、珍しいねお姉ちゃんが料理なんて。」
「まぁ、ちょっと…」
「彼氏!?」
「違う!!」
恋バナかと飛びつくところは学生の第二の本分だろうな、と思いながら全力で否定しておいた。
そんなわけで午後は京子に教わりながらクッキーを作ることにした。しかしいざ作ろうとなると、タマゴと牛乳が足りないことが判明。それがないくせによく作ろうと思ったな、と自嘲気味に笑って、一人買い物に出かけた。京子も行くと言ったが、頼む立場としては行かせるわけには行かないのでお家の留守番を任せた。
街に出て、一直線にスーパーに向かう。早くしないと私がクッキーを練習する時間がなくなっちゃう。最低でも三回は練習しないと、人に食べさせられない。小走りで角を曲がるとどん、と何かにぶつかってどすんと尻餅をついた。
「ゔぉい、大丈夫かぁ?」
「はい、すいませ…ってうぇえ!?スクアーロさん!?」
「おう、お前よくぶつかるなぁ…」
「スクアーロさんが私の前に立ちはだかるんです。」
「意味わかんねぇ。」
「というかこんなところで何してるんですか?」
「俺はスーパーに行こうと思ってなぁ。てめぇこそ何やってるんだぁ。」
「私もスーパーです。スクアーロさんたちを迎え撃つための修行をしている弟たちにクッキーを作ってあげようと思いまして。」
「あ゙ぁ?俺を迎え撃つだぁ?お前、あいつらの仲間かぁ!?」
「まぁそうですね。でも私とスクアーロさんの仲です、敵対関係なんて乗り越えられますよ!」
「はぁあ゙あ!?どんな仲だ、まだ会うの三回目だろぉ!!」
「(こんな全力でツッコまれたの初めて、ボケるのって気持ちいい…)さぁスーパー行きましょう!」
「人の話を聞けぇええ!!」
スクアーロさんの手を引きはじめて気づいた。今日、サメハンカチ持ってくるの忘れた。