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ピンポーンピンポーン
インターホンがなる。何回も何回も。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「…っ、ぅうん…」
ピンポーンピンポーンピンポーン
「〜! うるさいわ!!」
一度布団に潜ってやり過ごそうとしたが結局起きた。がしがしと頭を掻いて体を起こすと横で京子と了平がすやすやと寝息をたてていた。
こんなにインターホン鳴ってて母さん出ないのかよ、と思ったら書き置きに買い物に行ってくる旨があった。時間は午前十時。微妙な時間だな宅配便か?こんな思考をしている間もインターホンは鳴りつづけている。
「はいはい、今出ますー。どちらさ…ツナ?」
「わ、なまえさん!おはようございます!」
「おはよう…」
「すいません何度もインターホン…こいつがってリボーン!」
「チャオっすなまえ。」
いつの間に肩に乗ったのか耳元からリボーンの声がした。
「祝賀会は十二時からだよね?」
「あ、はい。あの…スクアーロのことで…」
「え、」
「会いたいか?」
「へ、あ、はい…!」
「じゃあ連れてってやるぞ。」
ついてこい、と言われツナに案内されてやって来たのは辺鄙な場所にある蔦の絡んだ病院。こんなところで患者が良くなるのか、と疑ったが、なかに入ると外見とは裏腹に新居のようにきれいで設備も整っているようだった。
ここにスクアーロさんはいるのか。なんだか緊張してきた。一昨日のあれは周りからすれば感動の再会だったかもしれないが、当事者の私が振り返ると恥ずかしいことこの上ない。
「ここだぞ。」
「! …、っスクアーロさ「ゔお゙ぉい!ザンザスは無事何だろうなぁ!」
「うるせーぞスクアーロ。怪我人なんだからちったぁ静かにしろ。」
「るせぇ!寝ているのは性に合わねぇんだぁあ!」
「スクアーロさん!」
「ゔ、ぉ…なまえ…!」
「どうも。連れてきてもらいました。」
リボーンに気を取られているスクアーロさんに入口からひょこっとツナと顔を出す。お互いなんだか気恥ずかしい。ツナは顔を赤くしたり青くしたりと忙しそうだった。
「…イタリアにはいつ戻られるんですか?」
「まだ分からねぇ。俺もこんな状態であっちに戻っても何も出来ねぇからなぁ。」
「そうですか…」
「…………」
「イタリアには帰らない。お前のそばにいる。」そんな台詞が欲しかった訳じゃないのに自分の声はどこか萎んでいた。それを察知したようにスクアーロさんは気まづに頬を掻いた。
「なぁなまえ、お前はその、俺のことが、好きなのかぁ?」
「ぶっ!」
「な、なにを急に!ばばバカなんですか!?」
「まだお前言ってねぇだろぉ。」
「言うんですか!?今ここで!?」
「聞きてぇ。」
スクアーロさんは病人のくせにニヤニヤニヤニヤ笑っていた。もちろんリボーンも楽しそうである。ツナは京子と発展しないだけあって私同様顔を赤くしていた。
「…っ! す、」
「なまえ、俺はお前が好きだぜぇ。」
「なっ、あ、っ…私も、私も好きですよ!だから…だからもう離れたくない、です!」
満足そうな顔をしてスクアーロさんが微笑んだ。立ち上がって私を抱きしめる。耳たぶにキスをされた。
え…
「なっ、え、なんで 立って、えぇ!?」
「もうこれくらい出来る。」
「だっ騙しましたね!!」
「俺は立てねぇなんて言ってねぇぞお。」
「(この人は本当に…!)」
「なまえ、」
「は、い―…」
この人には敵わないな。そう思って名前を呼ぶ彼の方を向けば、不意打ちで唇が重なる。その瞬間、またこの人には敵わないなと思った。
なかなか離れない唇に戸惑いながらも、友達からの知識で口だけは開けないように唇を強く噛んだ。スクアーロさんが唇を舐めた時も身体は震えたけど口は開かなかった。舌は、さすがにだめ…!
「チッ意外と強情だな。」
「そう簡単に舌は許しません!」
「なんか違くねぇかぁ、それ。」
「なんだ舌入れねーのか、つまんねーな。」
「リ、リボーン!」
「ぎゃあぁあなんでいるの!覗きぃいい!!」
「連れてきてやったのは俺らだぞ。」
リボーンの鉄拳をくらいなぜかスクアーロさんと共に正座させられた。大事な話と銘打って聞かされたスクアーロさんもといヴァリアーの方々の処分。処分内容はまだ決まっていないらしい。
「で、?」
「スクアーロの処分内容はなまえに決めてもらうことになったんだ。」
「…え?」
いやいやいやいやこんな小娘にそんな重大な決定権委ねちゃだめだろ!という私の訴えも虚しく今決めろとリボーンに銃で脅された。
「…本当に私が決めるの?」
「あぁそうだぞ。」
「スクアーロさんはそれでいいんですか?」
「上が決めたことなら仕方ねぇ。」
「…じゃあ、一ヶ月に一回は私に会いに来ること。ボンゴレへの忠誠は誓わなくてもいいけど、自分の立場が危なくなるようなことはしないで…」
私はマフィアじゃないし、スクアーロさんのことなんてほとんど知らない分からないガキだし、きっとそっちの世界に入れるほどの能力も勇気もないしおそらく誰も望まない。だけど私はスクアーロさんのことが好きで、だからわがままを通すことにしたんだ。
「それでいいですか?」
「当たり前だぁ!」
がばっと抱き着いてきたスクアーロさんは私より大人なのか疑いたくなるほど無邪気で思わず涙が出た。
「スクアーロさん、怪我治ったらうち来ませんか?」
「なんだぁ誘ってんのかぁ?」
「はい、京子が美味しい肉じゃが作るんでお祝いしましょう!」
「(そうじゃねぇよ)京子つーのはなまえの妹か?」
「はい!かわいいです!」
「(ばか野郎!お前のがかわいいぞぉ!)」
「な、なんですか!その目は!」
愛してるを伝えるために僕は今日も君の隣で笑う
「(俺たちがいること完全に忘れてる…)」
「帰るぞツナ(やってられねぇ)。」
「スクアーロさん、ハンカチ、返しますね。」
「あぁ。」
「ハンカチ、拾ってよかったです。」
「俺もこのハンカチ落としてよかったぜぇ。なまえと会えたからなぁ。」
「はい!」
小さなサメがハンカチの中で笑う
―end―