26
振り向くとそこには私が一番会いたい人がいました。
包帯ぐるぐる巻きで。
「え、スク、あーろ さん?」
「久しぶりだなぁなまえ。」
「スクアーロ、さん?」
「あぁ。」
「…っ、スクあ、ろ さん!」
「んだぁ、泣くんじゃねぇぞぉ。」
「今は腕が動かねぇからなぁ」なんて苦く笑うスクアーロさんは白い包帯を体中に巻かれて車椅子に張り付けられていた。
最初はちゃんと見えてたのに、なんだかもうぐしゃぐしゃだ。
目から出るものを必死に拭いながらスクアーロさんの車椅子まで行って手を握った。
「信じられない…!生きていたなんて!!」
「雨戦の日部活をB棟に忍びこませていたんだ…山本を救う為にな。だが、水槽に落ちたのはスクアーロだった…」
「跳ね馬、…」
「どうした?スクアーロ。」
「悪いが、片腕だけでも外してくれねぇか?」
「…それは、」
「頼む。」
俺の手を握ってぽろぽろ涙を流すなまえに触れないなんて無理だ。跳ね馬はお人よしだからな、頼んだら案の定なまえが握っていない方の腕を自由にした。俺が頼むなんてことが珍しいからかもしれねぇが。
「なまえ…、わ、」
「…っ、?」
「…悪かっ、た なぁ。」
「うっ、ほ 本当、ですよ!」
「ゔ、ぉ…」
「迎えに来るって、かっ攫うって言ったのに!」
「攫われる準備してたのかぁ?」
「っ…当たり前じゃないですか…!」
顔は真っ赤で涙が流れてるもんだからさらに酷いことになってるのに、どうして俺にはこんなにかわいく見えるんだろう。自由になった手でなまえの涙を拭う。包帯に涙が染み込んだ。
「なまえ…」
「スクアーロ、さん、」
なまえが立ち上がって俺の首に腕を回す。傷が痛む。なまえもそれに気付いたが大丈夫だと言って腕の力を強くさせた。なまえの背中を強く握る。掻きむしるように抱くと身体が密着して、熱くなる。下を向いた彼女から涙のしょっぱさが落ちる。
「スクアーロさん…よかった、無事でっ…無事でよかった…!!」
「あぁ、そうだな。」
「今度は、今度は私が攫いに行くから、待って て下さい、絶対です…!」
「ゔぉ、…お゙ぉ待ってるぜぇ。」
満足そうに、嬉しそうに笑ったなまえはもう泣いてはいなかった。
はやく力いっぱい抱きしめたい
「…おい、全員早く解毒しろ。カス鮫を殺る。」
「ザンザス、手を貸そう。」