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「私は昔着てたのがあるけど、ハルはどうすんの?」

「ビアンキさんが用意してくれるらしいです!」

「え、ビアンキさんも行くの?」

「うん!みんなで行くよ!」


ふーん、と返事をしながらクローゼットの奥の昔(といっても去年まで着てたんだけど)の並中の制服を引っ張り出した。残念なことに身長はあんまり変わってないので難なく着れる。自分では顔もあまり変わってないと思ったんだけど、こうして中学の制服を着てみると不釣り合いだった。


「じゃあハルはビアンキさんたちと一緒に行きますので!シーユーアゲインです!」

「うん、またねハルちゃん!じゃあ行こっか、お姉ちゃん。」

「はいはい。手でも繋いでく?」

「…いいよ?」


仕方ないなぁ、お姉ちゃんは甘えん坊だもんね、なんて照れ隠しをする京子は珍しい。しっかりと手を握ってローファーを鳴らす。中学時代の先生に会わないかドキドキしてる私に「今日は職員会議だから大丈夫だよ」と京子が言った。


私は昼休みまで一人で屋上にいた。在学中は出来なかった贅沢な時間の過ごし方に少し耳がこそばゆい。長い時間を私は持ってきた文庫本を読んだり、眠ったり、やって来た雲雀さんとおしゃべりしたりした。

雲雀さんは「僕は勝ったよ」とずいぶん得意げな顔で言って、私をバカにした。そんな雲雀さんに作ったお守りをあげるとくだらないな、とか言いながらも大事にポケットに入れてくれた。


カシャン、とフェンスを握る音で目が覚めた。男女の話し声が聞こえる。日陰からのそのそと這い出ると、ツナと京子が居た。


「ツナ君の顔、新幹線みたい!」

「えぇ!?シンカンセン!?」

「あはは。」

「はは…」

「これ…ツナ君に。」

「お守り?…って、これ俺に!?」

「うん、お姉ちゃんとハルちゃんと作ったの!最近夜の相撲大会でケガ人が多いでしょ?だから安全祈願!と必勝祈願も!」

「ありがとう!俺…次の戦い…負けるわけにはいかないから。」


いつの間に、こんな顔するようになったんだろう。きっと私がふさぎ込んでいた二日間に、いや、もっと前からか、確実に闇を知り、影を知り、そして光を求める思いを強くしたんだろう。なんか置いていかれた気分だ。隼人もこんな顔するようになったのかな。


「ツナ、頑張ってね。」

「なまえさん!?」

「ハルもいますよー!」

「な、なにしてんですか!」

「ねぇねぇそれより隼人たちは?」

「連れてきたぞ。」


ぞろぞろと隼人、山本、了平、リボーンが屋上に入ってきた。隼人は私を見るなり、駆け寄ってまるでわんこだ。


「なまえ!てめぇ心配かけやがって…!」

「心配したんだ?」

「あ、当たり前だろ!姉貴、みてぇなもんだし、よ…」

「はは、ありがとう。」


隼人の銀髪をわしわしと撫でてそのまま片手で抱き抱える。隼人は顔を真っ赤にしてやめろ、って言ったけどぎゅうってして「ありがとう」と耳元で隼人にだけ聞こえるように言ったら隼人も私にだけ聞こえる声で「あぁ…」て呟いた。


「なまえさん…あの、」

「山本、」

「すいません、俺…」

「はは、どうしたの山本。あんたらしくない。気にしないで、あんたが悪いんじゃないんだから。」

「でも…」

「よかったよ、山本が生きてて。」

「なまえさん…!」

「なんだ?来るか?」

「いっ、行かないッスよ!」


珍しく顔を赤くして動揺する山本にみんな笑った。隼人は私の隣のフェンスに背をもたれ、少し気まずそうに言った。


「大丈夫なのかよ。」

「まぁ、前よりは。ねぇ、スクアーロさんが迎えに来てくれなかったら、隼人がもらってくれる?」

「百年待って来なかったらな。」

「うん!」


冗談めいた会話に微笑んだ隼人の顔はツナと同じように何かを祈る顔だった。



ここへ帰って来れますように


「タコヘッドー!極限に姉貴を嫁にはやらーん!!」

「うっせぇこのシスコンが!!」

「(お前もだよ)」













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