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俺はどうかしちまったんだろうか。

たった今キスした女はまだまだガキで、たぶん、いや捨て台詞からするとかなりの確率で初めてだっただろう。俺はと言えば、まぁもうそれなりに経験はしてきたが、あんなガキに惚れたのは初めてだった。

たまたま道を聞こうと声をかけたどうでもいい女のはずだった。
最初は本当にどうでもよかったんだぁ。本当だぞぉ!だが、俺を怖がるでも、俺に媚びを売るわけでもねぇなまえの態度には正直やられた。公園で我慢仕切れず、手を出しちまう程になぁ。


「やべぇ、だろぉ。」


舌を入れるわけでもねぇほんの少し触れたなまえの唇が忘れらんねぇ。生身の指で自身の唇をゆっくりなぞると鮮明に思い出されるぬくもりと事後のなまえのかわいらしい反応。やはり、あのまま攫ってしまえばよかった。
いやしかし俺とあいつは敵同士であってだなぁ、年も離れててだなぁ!…それでも惚れたもんは仕方ねぇがなぁ。





***





あんなことを言ったけど、私は意外と冷静だった。もちろん初めてのキスに戸惑っていたし、心臓のバクバク度は半端じゃなかった。だけど。どうしてだろう。あのキスで伝わってきたのは彼の優しさとあたたかさで、私は彼のことが好きだと思った。それと同時に感じたのは後ろめたさで、どうやって山本を応援していいのかわからなくなった。しばらく歩けば、キスの喜びより、不安の方が大きくなってしまって、どう対処するか考えていたら舞い上がる前に家に着いてしまった。


「た、ただいま!」

「おぉ姉貴!極限におかえりだ!」

「了、平…!」

「ん?どうした姉貴…」


了平を見た途端、いままで隠していた動揺がぶわっと出て縋るようにしがみついた。


「ど、しよ…!ちゅ、ちゅーしちゃっ、ぅうわぁあ恥ずかしい!どうしよう!!」

「お、落ち着け姉貴!ちゅーとはなんだ!キ、キッスのことか!?」

「そそそうだけど!キッスとか言わないでよ余計恥ずかしいよバカ!」

「姉貴が極限に破廉恥だぁあ!一体相手はどこの誰なのだ!?」

「ス、スクアーロさん…」

「なに!?山本の対戦相手ではないか!」

「うん…ごめん。」

「姉貴?」

「本当は、ダメって分かってるんだけど、でも…」

「…………」

「好き なの、スクアーロさんのこと、好きなの…!」


いつの間にか私はうわぁあと子供のように泣き出して、昔より逞しくなった了平の腕の中にいた。山本のことはかわいい後輩だしいい奴だし大好きだけど、みんなのことも大好きだけど、それとは違う「好き」を知って、もうどうしたらいいかわかんない。譫言みたいにごめんと好きを繰り返す私を了平は珍しく静かに抱きしめててくれた。


「みんなに、合わせる顔がないよ…今日は応援にいけなっ、うぅ、」

「何故だ?」

「…え、了平今の話聞いてた?」

「うむ!何故だ?」

「だ、から…みんなのこと応援しなきゃいけないのに、スクアーロさんに負けて欲しくないの。」

「…スクアーロとやらのことを好きだと俺達を応援出来ないのか?」

「え、」

「別に構わないのではないか?両方姉貴の大事な気持ちだろう!俺も、ルッスーリアは面白いと思ったしな!」

「み、みんなも そ、言うかな…」

「当たり前だ!皆、この俺の見込んだやつらだからな!」

「うっうわぁああ了平ぃいい!!」

「うぉ、姉貴!」

「あっお姉ちゃん帰って来てたの?あー!お兄ちゃんばっかりズルイ!」

「京子ぉうおう!京子もおいでぇー。」


了平のまっすぐな言葉がうれしくて、京子のヤキモチがかわいくて、泣きじゃくった後、その日は三人仲良く台所に立った。



この恋心と、さよならはしない













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