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私は今本屋にいる。花屋を左に曲がって真っすぐいったところにある本屋である。向かいには私の行きつけの雑貨屋がある。
本屋に来た理由は二つある。一つは隼人に「世界の謎と不思議」の増刊号を買ってあげるためである。負けたとは言え、シャマルさん曰く、『一番大きな成長をみせた』らしいので、そこは第二の姉として祝福すべきだろう。
もう一つは、心を落ち着かせるためである。むしろこっちメインなんだけどね、だって今日ついにスクアーロさんVS山本戦なんだもん。このモヤモヤどうしたらいいの助けて助けてってことで、心を落ち着かせようと思ったわけだ。今は宗教コーナーで仏像を見て悟りを開こうと奮闘中だ。そしてそんな私の心境も知らずに京子は私に豚コマを買ってくるよう言い付けた。なので仏像もそこそこに「世界の謎と不思議」増刊号を手にレジへ。そして気づいた、私 財布 忘れた!
どうしようどうしよう、と周りをきょろきょろしていると長い銀髪が目に入った。
「す、スクアーロさん!」
「ぅお゙、」
「スクアーロさん!スクアーロさぁあん!!」
ぶんぶん手を振ってスクアーロさんを呼ぶと眉間に皺を寄せ、顔を赤くしながら走って店内に入ってきた。
「ゔお゙ぉい!てめぇなに大声で人の名前呼んでんだぁ!しかもここ本屋だぞぉ!!」
「スクアーロさんのがうるさいです。あと名前覚えて下さい。」
「お前名乗ったことねぇだろぉ。」
「そうでしたか?笹川です。笹川なまえです。」
「ゔぉい、でなまえ。なんの用だぁ?」
「お金貸してください。」
「ゔお゙ぉい!なんで俺がお前に金貸さなきゃなんねーんだぁ!」
「また名前で呼ばなかったー。スクアーロさん、あなたは私に二つ借りがあります。」
「あ゙ぁ?」
「一つは並森中の場所を教えてあげたこと、もう一つはスーパーに連れてってあげたこと。つまりあなたは私に借りを返すべきなのです!さぁお金貸して。」
「あのなぁ…」
「498円。」
「ったく、仕方ねぇなぁ。」
渋々といった様子でスクアーロさんは私に500円玉をくれた。スクアーロさんの財布がすごい高そうだったこととかやたらキラキラのカードがいっぱい入ってたこととか、そういうのは敢えて今は目を瞑ろう。
「2円のお返しです。ありがとうございました。」
「おい、なんでなまえが釣りを貰うんだぁ。」
「あとで返す時498円返すの面倒じゃないですか。私がお釣り貰っとけば500円返すだけで済みますから。」
「ほーまぁまぁ賢いみたいだなぁ。だが、それくらいおごってやるぞぉ。」
「いえ、これは隼人へのプレゼントなんで、自分で払います。」
「隼人?」
「そっちの王子様に負けた爆弾君です。」
「…付き合ってんのかぁ?」
「いいえ!隼人は弟みたいなもんですから。あ、スクアーロさん今更ですが呼び止めてすいません。どこ行く予定だったんですか?」
「気にすんなぁ。俺はこないだの肉屋だ。」
「本当ですか!?私もなんです、一緒行きましょ!」
「お前金持ってねぇだろぉお!」
「出世払いでお願いします!」
「ゔお゙ぉい!!」
同じ道をまた二人
「おばちゃん、豚コマください。あ、この人の奢りで。」
「(この女…!)」