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私とオカマとの野次対決は強制終了され、リングがありえないくらい発光した。すかさずリボーンがサングラスを渡してくれた。うっかりスクアーロさんに目を向ければ、スクアーロさんもサングラスをかけていて、様になりすぎててちょっとよろめいた。
しかし、いざ本格的に勝負が始まるとスクアーロさんなんて気にしてる暇は無くなった。目の使えない了平に対して、ルッスーリアさんは目が利く。絶対的に不利だ。了平の悲痛な悲鳴が響く度に私の胸もキリキリと痛んだ。
「ぐあっ!腕があぁ!」
「了平!」
「やべーぞ。了平のやつ、手がだめになっただけじゃなく、脱水症状が始まってる。」
「…!」
「立てコラ!!」
了平の不利がまた一つと足されていく中、ずっと了平の修行を見ていてくれたコロネロくんが現れた。了平が意味深なことを言って立ち上がる。こんなに頼もしかっただろうか、弟の背中は。
「うおぉ!極限太陽!!」
勇ましい了平の叫びの後にはルッスーリアさんの怪しい笑み。嫌な予感がして、目を閉じると案の定耳を塞ぎたくなるようなグロテスクな音がして、了平の悲鳴が聞こえた。
「うわあぁあ!!」
「ああそんなっ…右手まで!」
「んーいい響きだったわ〜っ。」
「ゔお゙ぉい!いつまで待たせんだぁ!」
「んもうせっかちねぇ、言われなくても締めるわよ。」
だめ!つーかなんだスクアーロさん、あんにゃろー。姉の私がおとなしくしてんだから黙ってなさいよ!コロネロくんも!了平に無茶させないでよバカ!
「お兄ちゃん…?お姉ちゃんも?」
「京子!なんでここに!?」
「娘さん達がコロネロを探してたんでな。エスコートしたんだ。」
「父さん!?」
「ちょっとツナ!何してくれてんのよ!京子は巻き込まないって決めたのに!」
「俺だって知らないよ!ヒーなまえさん落ち着いて!」
京子が来たことによる私とツナの動揺は図り知れない。だが、京子は私と了平を強い眼差しでひたと見据えていた。
「お姉ちゃん…嘘ついたの?」
「ごめん。」
「なんで?」
「了平と二人で決めたの。京子には言わないでおこうって。」
「…っ、お兄ちゃんやめて!ケンカはしないって約束したのに!」
え!?ちょっと待って京子、あんた普通のケンカだと思ってるの!?どう見てもこれ普通のタイマンじゃないでしょ!しかも今結構シリアスな感じだったのに、なんか感づいてるぽかったのに!
「あらまぁあなた達三人兄弟?残念ねーこれで二人姉妹になっちゃうわね!」
「おに…「ちょっと了平!なにオカマに言いたい放題させてんのよ!京子との大事な約束、もう一個あったでしょ!?」
「…あぁ、たしかにあの時、もうケンカはしないと約束した。だがこうも言ったはずだ…」
「お兄ちゃん…」
「もう俺は…負けんと…!!」
「っしゃ!」
「みさらせ!これが本当の極限太陽!!」
私たちの顔の霧が一気に晴れる。悲痛な悲鳴は了平のものではない。了平が勝った!死にかけのオカマはキュインキュインなロボットにお姫様抱っこをされて闇に消えた。明日の対戦カードは雷との連絡はちゃんと聞いていたのだろう、髭面がランボを睨んでいた。
「了平!」
「お兄ちゃん!」
リングから降りてきた了平に二人で抱き着く。血とか汗とかそんなものは気にならない。了平は私たち二人の背中を優しく叩いてくれた。
「でもこれ普通のケンカじゃないよね?二人とも私に内緒で何やってるの?」
「そ、それはだな…」
「「相撲大会だぜ!」」
「リングでやるハイブリット相撲大会なんだ。」
「密かにブームなんだぜ。」
「それじゃあホントに…」
「あれ?京子気になるの?みんなあんたの為だって言ったじゃない。」
「でも…」
「私たちが見たいのはあんたの笑った顔なんだけど。」
「お兄ちゃん…勝ったんだよね?」
「おう!」
「そっか、じゃあ明日はお祝いだね!!」
にこっと満面の笑みを見せた京子はここ数日で随分強くなったんだろう。了平もそうだ。こんないい弟妹を持てて私は幸せだ。京子と了平の頭を撫でてそのまま抱き寄せた。
「よく頑張ったね。」
「姉貴…」
「お姉ちゃん…」
「そういう姉貴は何かしたのか?」
「え゛、」
「お姉ちゃんは何か頑張ったの?」
「…お姉ちゃんはクッキー作りを頑張ったの。おいしかったでしょ?みんな。」
「「…………」」
「え、ちょ、なんで黙んの。おいしかったじゃん!なんで!?」