13
リング争奪戦。
ハーフボンゴレリングを賭けた守護者同士のガチンコバトルはそう名付けられ、今晩11時からの開催だそうだ。なんとランボも守護者だったそうで、試合中の世話を頼まれた。了平の試合がいつかはわからないが、とりあえず精をつけさせるために豚コマでも買っていこうと思う。
「あれ、隼人今帰り?」
「おう。」
「途中まで一緒行く?」
「ん。」
門を抜けて二人で歩く。やはり隼人は目立つようで、同じく下校中の女子たちがちらちら隼人を振り返る。
「なぁ。」
「なに?」
「お前、あの銀髪と仲良いのか?」
「うーん…仲良いって程じゃないよ。前に道を聞かれただけ。」
「あいつは敵だぞ!仲良くなるなとは言わねぇが、その…」
「うん?」
「あいつと山本が戦うんだ。辛くなんのはなまえだぜ!」
「ありがとう。」
「ばっ!何で礼なんか言われなきゃいけねぇんだよ!ざけんな!」
「大丈夫、スクアーロさんより隼人のが大事だから。いまんとこは。」
「べっべつにそういうんじゃねぇ。」
「そういうんてどういうん?」
からかうとうるせぇ!と怒鳴って曲がり角に消えてった。あんなでも一応心配性なんだから。でも私がスクアーロさんとどうこうとかはならないからいらぬ心配だと思うけど。
隼人と別れて茂木精肉店へ。茂木精肉店では笹川家は常連さんで、たまにポテトをおまけしてくれたりする。
「こんにちはー豚コマ下さい。」
「あらなまえちゃん、こんにちは!豚コマね。いくつ?」
「300g!」
「あいよ!」
「ゔぉい、和牛のサーロインをあるだけよこせぇ。」
うっわぁすごいなぁこの人。和牛のサーロインなんて手が出せないくらい高いのを全部なんて。どんだけ大家族なの?そう思ってそろりと横を盗み見ると随分長い脚があってそれに負けない長さの銀髪が揺れた。
「「あ。」」
二人共口をアホみたいに開けて指をさす。この人は暗殺者なのにこんなアホ面してていいんだろうか。というか昼間からこんなとこウロウロしてていいのか夜の生き物よ。
「なにしてんですか、こんなとこで。」
「肉買いにきたに決まってんだろぉ。お前こそなにしてんだぁ。」
「肉買いにきたに決まってるじゃないですか。」
「はいお待たせ!豚コマ300とサーロインね!まいど!」
おばちゃんから差し出された肉の量の差と金額の差にびびりながら、スクアーロさんを見たらなんだ、というふうに睨まれた。いやいやこっちがなんだだよ。
「あ!スクアーロさん、ハンカチ!」
「ハンカチだぁ?」
「はい、道を聞かれた時に落としてったかわいい鮫の「ゔお゙ぉい!!」
足の長いスクアーロさんはもう既に遠くなっていて、だから私は大きな声でスクアーロさんを呼び止めた。ハンカチの柄はやはり少し恥ずかしかったようで、自らの雄叫びで私の声を掻き消した。
「この辺に公園かなんかはねぇのかぁ?」
「ありますよ、並森公園。」
「案内しろぉ。」