10
笹川家の不安
「ただいまー。」
「おかえりお姉ちゃん、遅かったね。」
「ん、隼人が頑張ってるとこ見てたらこんな時間だった。」
「ふふ、本当に獄寺くんと仲良しだね。」
「妬いちゃう?」
「ちょっと。」
かーわいーい、お風呂上がりのいい匂いのする京子を抱きしめてほお擦りする。京子はやめてよーなんて言ってるが、嫌がる様子はない。しかし笑う顔が一瞬陰る。
「どうした?」
聞くと、みんなが何も話してくれないのが悲しいらしい。傷は増えてくのに私は何にも出来ないの。そう言う京子は優しさに溢れている。不謹慎だけど、かわいいよねやっぱり。
「いいじゃんべつに。理由を話さないのはきっとあんたの為だよ。」
「お姉ちゃんは知ってるの?」
「…しーらないっ!」
「…そっか!」
「うん!」
にっこり笑った京子は何かふっ切れたような顔だった。それを影から覗いていた了平を私はばっちり見てしまったため、京子が部屋に戻ったあと了平の部屋を訪ねた。
「姉貴…」
「なによ。」
「京子は可愛いな。」
「当たり前でしょ、私の妹よ。」
「俺の妹だ!」
「うるさい!京子が起きちゃうでしょ!」
髪を乾かす為に自分の部屋から持ってきたドライヤーで了平の頭を叩く。了平は頭を押さえながらうぬぅ…とかなんとか唸っていた。
「京子は俺が守らなきゃいかんのだ。」
「…(私は守んなくていいのかよ)」
「約束したからな。」
「じゃあ守ればいいじゃない。」
「不安なのだ、本当に守れるのか。」
「…守れるよ。」
「極限に本当か?」
「だって、了平は私の弟だもん。」
了平は面食らったように一瞬目を大きく開いて、ちょっと考えて、そうか、そうだな!と納得したようだった。極限ー!とかなんとか叫びだしたからまたうるさいとドライヤーで叩いてやった。しかし今度は効き目が無くて、ランニングに行くとか意味のわからないことを言い出して、本当に走りに行きやがった。意味わかんねぇ。我が弟ながら理解不能。でもそこがかわいい所なんです。
お姉ちゃんの役目
たまにはちゃんと果たさないとね。