09
隼人が山で修行していると聞いてクッキーを焼いて持っていった。歩いていると上の方から紙飛行機が飛んできた。なにやってんのあいつ?どうせだから飛んできた紙飛行機を拾って行こう。
「隼人!どーん。」
「うわっなまえ!どうしてここに!?」
「シャマルさんが教えてくれたの。おやつしよ。」
拾ってきた紙飛行機は私の両手を埋めつくしていた。それをバラバラ隼人の上に落とす。隼人は頭に乗った紙飛行機を掴んで変に折れた部分を直した。
「修行どう?上手くいってんの?ちなみに私のクッキーは美味くできたよ、さぁお食べ。」
「どうせスパルタされたんだろ。」
「せいかーい。京子容赦ないからねー。」
京子に怒られながら作ったクッキー。めきめきと腕をあげた私は今やバリエーションも豊かである。今日はココアにしてみた。隼人の口には合ったようでリズムよく、クッキーを口に運んでいる。
「隼人ー。」
「んだよ。」
「私にとってあんたは二人目の弟みたいなもんなんだよ。」
「…急だな。」
「恥ずかしいから言わないけどさ、すごくすごく大切なの。」
「…おう。」
「だからね、無茶、しないでね。」
隼人はこう見えて実はすごくナイーブで、転校してきた頃は周りに溶け込めずに苦労してた。公園のブランコで一人喫煙するその姿を何度見かけたことだろう。
「俺は…お前に声かけらんなかったら、もっと尖ってた。」
「今も十分尖ってるけどね。」
「うるせぇ!俺はお前に感謝してんだ!だからっ…」
「ふふ。」
「だから…なまえが悲しむようなことしねぇよ。」
折り直した紙飛行機がくしゃりと歪む。少し汗ばんだ隼人の手を握ると、隼人は泣きそうな顔をして、だから私はつい体を寄せて抱きしめた。
「大丈夫、あんたなら出来るよ。」
応援してるよ。私のかわいい、二人目の弟。
「おっなまえちゃん来てたのか〜。」
「ちょっどこ触ってるんですかシャマルさん。」
「いいじゃねぇか、尻くらい。」
「セクハラァア!やめろこの変態保健医!」