めちゃくちゃ高そうなベッドの上で狂ったように怯える金持ちの心臓を打ち抜いた。彼のボディガードたちは高い絨毯の上で血を流してる。さて、これで今日の任務は終了。確かスクアーロも明日の夜までは空いていたはず。久しぶりにイチャイチャあんあんしたいところですな。

妄想でうふふしてたところて現実に引き戻すようになる携帯。着信はベルから。まさか連続任務か?とげんなりしながら通話ボタンを押す。


「もしもし?」
『あ、なまえ?おしらせースク先輩が記憶喪失』
「…は?」
『だから記憶喪失。日常動作と自分の名前以外忘れちゃったの、ボスが花瓶クリーンヒットさせたせいで』
「いやいや…そんな、え?ガチ?」
『だからそうだって。まぁいいから早く帰って来いよ、面白いもん見れんぜ』


ししっという笑い声を最後に電話がきれた。記憶喪失?スクアーロが?てか記憶喪失ってそんな簡単になるもんなの!?花瓶があたったくらいで?ボスもそんなところで無駄にヴァリアークオリティー発揮しなくていいから!!
とりあえず私は車を飛ばした。ここぞとばかりにヴァリアークオリティーを使ってハンドルをきった。
混乱したまま屋敷に着いて一旦落ち着こうと洋式トイレに座った。

落ち着け落ち着け、よく考えろ。記憶喪失ってことは何かを忘れちゃってるのよね?どのくらい忘れてるの?今までの人生すっぽり?ヴァリアーのことも?いやいや映画や小説なら彼女である私のことだけは覚えてて…あぁ愛の力ってスバラシイ!!みたいなやつでしょ!?
よし!おっけー!いける!!


「って、ぎゃーー!!」
「一人でブツブツなにしてるんだいなまえ?早く来てくれよ」
「マモたん…トイレの上から覗きなんて大胆ね」
「君の排泄行為なんて見たくないし撮っても売れないから興味ないよ」
「え、辛辣。…ちょっと待って!売れるならマモたん排泄行為も写メるの!?もしかして、もしかしてとは思うけどスクアーロとか、ボスの、」
「そのスクアーロが大変だよ」
「え…」


ふわふわ宙を浮くマモたんのあとに続いてスクアーロの休む病室へ。大変って…まさか脳神経がやばいとか?


「なまえ見つけたよ」
「スクアーロ、どうしたの?大丈夫?」
「………」
「スクアーロ?」
「あなたが、私の恋人のなまえさんですか?」


!?
いいいまの、本当にスクアーロが言ったの?声やっさしい!!てか目!すんごい澄み
きってるけど!どしたの?あの人殺してテンションあがってる鮫の如きギラギラ感なんてみる影もないよ!鮫というより熱帯魚だよ!!鑑賞用のただのイケメンだわ!!


「あの、なまえさん?」
「えっあ、はい!!」
「すいません、私どうも記憶を失ってしまったようで…あなたのことを忘れてしまったようです」
「は!?」
「す、すいません!」
「え、謝っ…え!?」
「愛する人を忘れるなんて…」
「きもい!スクアーロ思った以上にきもい!!」
「そう言われても仕方ありません」
「うわぁあん怖いよきもいよ!ボスー!!」
「うるせぇ」
「ししっボスさぶいぼでてんじゃん。まぁ王子もちょっとじんましんなんだけど」
「ザンザス…」
「「え?」」
「ザンザス!!よく無事で!」
「………」


ボスが入ってきた途端ぱぁっと輝くスクアーロの顔。しかも私たちボスってよんだのにザンザスとか言って。記憶無いんじゃないの、なに名前覚えてんの。私のことはきれいにすっぽりまるっと忘れてるくせに!!


「ボス、ってことはボンゴレ十代目の座につかれたのですね!」
「………」
「すごいわ、スクアーロが敬語使ってるわ。ボスったら怒りも忘れてひたすらさぶいぼよ」
「…ボスのことは覚えてるんだ」
「なまえ…!?やめてあげて銃構えるのやめてあげて!」
「ザンザス、あなたのためなら私はなんでも出来る。記憶は失いましたが、身体が覚えてる。また私に任務をください」


たぶんその場にいる全員が一瞬呼吸を忘れた。記憶を失っても忘れられないほどに惚れ込んだザンザスへの怒り。その執念。きっとこいつは今の状態でもザンザスのためならもう片方の腕も切り落とす。そう分かった。
まぁどん引きなわけですが。幹部全員どん引きだし、当のボスなんて白目剥いちゃってるよ。現実わや見ない気だよこの人。


「てかなんでスクアーロ記憶喪失になったの?原因は?」
「ボスが投げたのがクリーンヒットしたんだ。気絶して目を覚ましたと思ったらこれさ」
「え、そんなんいつものことじゃん。クリーンヒットだって珍しくないでしょ」
「ししっ、今日ボスが投げたの何だと思う?」
「なに?セロテープとか?刃の部分が刺さったの?」
「レヴィ」
「は?」
「レヴィ」
「レヴィ投げたの!?すげぇ!」
「それでレヴィのく、唇とスクアーロの、……まぁそういうことだよ」
「うわぁ…想像したくないけど想像しちゃった最低。ボスさぶいぼたててるけどボスが悪いんじゃん」
「うるせぇオレを責めるんじゃねぇ。いま一番辛いのはオレだ」
「私だよ!!恋人に覚えて貰えてない私が一番辛いよ!!」


あーだからレヴィいないんだ。きっと寝込んじゃってるんだね。じゃあ記憶戻すにはもう一回レヴィと…


「…ボス、もう一回レヴィ投げてみない?」
「ふざけるな思い出させるんじゃねぇ」
「じゃあどうやったらスクアーロの記憶戻るの?私のこと忘れたままなんて、いやだよ…!」


いやだよ、スクアーロは忘れちゃったの?忘れたままでいいの?


「ていうか、なんでボスのことは覚えてて私のことは覚えてねぇんだよこのカスが!!!」


抑えきれないこの怒りは全部あんたが受け止めなさいよ!!渾身の力を拳に込めた。そのままスクアーロの頬にぶち当たって体は覚えてるとかぬかしやがったくせにあっさり気絶した。


「ショックで忘れたもんはショックで戻せばいい」
「昭和のテレビかよ」
「………に」
「あ?」
「せっかく両思いになれたのに、私のこと忘れるなんて許さないんだから」


気絶してるスクアーロにそっとキスをした。早く目を覚まして、そしていつもみたいにうおぉいって言って、髪をくしゃくしゃに撫でて。


いまはわたしがあなたの王子様
このくちづけで目覚めて




『なまえー速報スクアーロ起きた記憶戻った』
「ほ、ほんと!?おっけーすぐ戻る!!んでもう一発殴る」
『ゔ゙゙゛点おぉい!!なまえのキスで目覚めてやったぞぉ!』
「なんでそこの記憶あるんだよおかしいだろ!!死ねカス!!レヴィのキスで目覚めろ!!」





記憶喪失ねた
中途半端に終わったのではないだろうか
悔しいぃい


130608


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