「なまえ、すまねぇまた頼む」
「スクアーロ、今日はどこ」
「頭。だから血止まんなくてよぉ」
「あーあ、また良いところに当ててもらったねぇ」
「ったく、オレはとばっちりだぞぉ」
「あれ?今日はボスじゃないの?」
「ベルとフランのケンカの仲裁だぁ。お前からもちゃんと言っといてくれ」
「私の彼が、いつもお世話になってます」
「本当になぁ」


スクアーロの額にガーゼを押しつけてテープで止める。どうせすぐ取れちゃうだろうけどね。まだ血止まってないし。


「はーい出来たよ」
「グラッチェ」
「ちゅーもしとこうか?」
「いらねぇよ」
「えー即答?」
「あとでめんどくせぇのはごめんだぁ」


確かにね、そう思いながらひらひら手を降るスクアーロの後ろ姿を見送った。そろそろ私の王子様が来るかな。

白衣で手汗を拭く。ベルが会いに来てくれると思うと緊張しちゃうあたり私もまだ若いのね。


「なまえー」
「べ、ベル!」
「ししっ、おつかれ。」
「ありがと、ベルもおつかれ」
「今日の任務つまんなかった」
「ベルが楽しい任務なんてそうそうないよ。あったら困るし」
「まぁな。だってオレ王子だし」
「それより堕王子さん、またスクアーロに迷惑かけたでしょ」
「………」
「もーあんまりスクアーロのこと困らせちゃだめだよって言ったでしょ?」
「んだよ、スクアーロの味方かよ」
「そういうことじゃなくて、え、」


いきなりまとめていた髪をほどかれた。なになに、びっくりするほど近いんですけど。


「彼氏の前で他の男の悪口言うようなやつには、お仕置き」


耳元にベルのえっろい声が響く。ばくばくばくばく。心臓の音がいきなり早くなって耳に響く。絶対ベルにも聞こえてる。ていうかお仕置きって、お仕置きってなんだよ!!


「…く、くくっ…」
「なっ、なんで笑うの!!」
「ししっ、おまえ本当に男慣れしてねーよな」
「そんなことない!!そこそこ!そこそこあるから!!」
「いいって、王子が全部教えてやるから」


どきどきしすぎて心臓止まるかと思った。ていうか止まったんじゃないのこれ。三秒くらい止まった気がするよ。


「…恥ずかしいことを、」
「うれしいだろ?王子に全部教え込まれるの」
「……………ん」


腰を引き寄せられて頬を撫でられる。ゆっくり目を瞑ればあたたかいくちびると重なる。暗殺者のくせにどうしてこんなに幸せな気持ちにさせるのかなぁ、このひと。

王子だからって、言うに決まってるけど。



私にとっては本当に王子様


そんなこと口が裂けても言わないけれど




131117

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