#14
「ひとまず、ズルッグは大丈夫ね」
意識があったズルッグに煎じた薬を飲ませたアイリス。
「・・・問題はヤヅキの方なんだけど」
意識がなく、目を固く閉じているヤヅキは、デントによって運ばれて、寝袋に寝かされている状態だ。
「薬を飲ませるにも、本人の意識がないから」
ヤヅキが起きるのを待つしかないか、と諦めかけていた矢先、
「ミィ!ミィミィミミ」
「ピッカピ、ピカ!!」
「キバ、キババ!!」
「ヤ、ヤナ?ヤナナ!」
モンスターボールから出ていたポケモンたちが、何かを話し始めた。
そして今度は劇っぽいものを始めた。
「ピーカ、ピカチュ!」
「キバ、キキバキ」
「ヤナ、ヤナー」
「ミィ・・・」
「ミィミ!!」
「ヤナッ!!」
「ピッカチュ!!」
「ミィ?」
「ヤナ?」
「ピカ?」
「・・・なあ、何かわかったか?」
「わかんない・・・」
「僕もだ・・・」
ピカチュウたちは何かを伝えようとしていたが、サトシ達には伝わらなかった。
「ピーカ!ピカピーカ」
ピカチュウは、アイリスが作った薬を口に含む真似をした。
「ミィ・・・ッ、ミィミ!!」
「「「・・・」」」
ああ、今日は沈黙が多いw
「・・・何かわかった気がする。」
「・・・僕もなんとなく;」
「え?わかったの?」
わかった者同士は顔を見合わせ、分からなかった者は首をかしげていた。
「つ、つまり、そ、そういう」
「だ、だよねぇ・・・」
以心伝心状態になったデントとアイリスは思いっきり脱力した。
「なあ、どういうことだよ!俺分かんねえんだけど!」
「わからないほうがいいわよ、多分」
問いかけてきたサトシをめんどくさそうに受け流すアイリス。
「・・・確かに、それもひとつの手段だね」
「でも、誰がやるのよ!!そ、そそそその、ね?私がやっても問題だし、デントがやっても同じじゃない;」
分かっていないサトシを放置して話を進めていく2人。
どうしたらいいんだろう、僕。
結局アイリスに頼まれて(というより押し付けられて)ピカチュウ達の提案を実行することになってしまった。
すんごく恥ずかしい。
だってね?
ヤヅキって女の子じゃないか。
だったらアイリスが薬飲ませたほうがいいと思うんだよね、僕は。
え?薬飲ませるだけならいいんじゃないかって?
そうでもないよ?
方法が、ちょっと・・・;
く、くち・・・うわああ恥ずかし過ぎて言えません!
でも実行しないとヤヅキが薬飲めてない状態になるわけで。
こうやってやってるうちにヤヅキが起きてくれたらなぁ・・・とか考えたり。
「・・・仕方ない、か」
誰も見てないし
※アイリスの配慮で皆はその場から離れました
「ッ・・・」
やっぱり苦い薬を口に含み、ヤヅキの寝ている横に膝をついた―――――――
(ぅわお///デント、やるのね!?)
草陰に隠れたアイリスがものすごく期待した目でデントとヤヅキを見ていることは知らない。
「んッ」
(飲んで、ヤヅキ)
ヤヅキの喉が小さく動いたのを確認して、急いで離れた。
「っはー・・・///////」
大げさなほどに五月蝿い自分の心臓。
深呼吸を繰り返しているうちに漸く収まっていった。
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