#9



「・・・かかってこい」
子供のえりを離して、デント達の方に優しめに押し、腕まくりをした。

「はっしゃ!」
「はっしゃ!!」

一斉に飛んでくる泥団子。
それをすべて叩き落とした。

「・・・ふう、手が泥まみれだ」
肘あたりにかけて、右腕に泥が付着していた。

「せんせいがきた!」
「にげろー!!」

再びにげだす子供達。

ついでに、サトシの帽子がいつの間にかポケモンの手に引っかかっていた。
「あ!?俺の帽子!!」
多分、避けた時に落ちたのだろう。

「・・・なんなの、あのガキ共」
「いたずらにも程があるね・・・」
デントが服に着いた砂を払いながら言った。

「・・・っつうわけだ。簡単に許してもらえると思うなよ?ガキンチョ」
「ぅ〜・・・」
ひとり残された子供に言うヤヅキ。


「ごめんなさい、皆私の幼稚園の子なの。許してあげて」
「すまんの・・・」

さっき見えた大人2人がやっと到着したようだ。

「まあ、お姉さんに免じて、許してやるさ。でも、ちゃんと言う事は言えよ?」
「・・・ごめんなさい」
「よし。」
それだけ言うと、子供をお姉さんに渡した。
アイリス達にも言って欲しかったんだけど。

「・・・とりあえず、泥を洗いたい」
「この先に私たちの幼稚園があるの。そこで洗いましょ」

ひとまず、幼稚園に向かうことにした。



腕の泥を落として、皆がいるところに戻ってくると、何やら卵のことで盛り上がっているようだった。

「うちは育て屋なんじゃよ。わたしゃキクヨっていうんじゃ。この子は孫のユリじゃ」
「よろしくね!」
こちらも、簡単な自己紹介を済ませて、事情を聞いた。


「さっきはホントにごめんなさい
実は昨日、子供達があのヤブクロンを勝手に連れて来ちゃったの」

「ふーんヤブクロンっていうんだあのポケモン」
「この町の外れにある、スクラップ置場で見つけたらしいんだけど」

ヤブクロンは、ゴミが化学変化を起こして生まれたポケモンらしい。
・・・だったら、元の世界はヤブクロンで溢れかえってるな;



「・・・うわお」
子供たちがヤブクロンを連れてきて、こうなったらしい。

木を中心にして、ゴミが積み上げられていた。
・・・よくこんなに多くのゴミを運べたな、と観点がずれているヤヅキだった。

「ヤブクロンと子供達がスクラップを集めてこんなにしちゃったの」
「このテイストは秘密基地ですね」

「秘密基地かぁ〜。やるなぁアイツら」
「ちょっとここは感心するとこじゃないでしょ
も〜子供ねぇ」

サトシもまた観点が違う奴の1人だった。

「このままじゃ、いつ崩れてもおかしくないわ」
危険だということで、片付けを手伝うことになったのだが

「パス」
「「「えええ!?」」」
ヤヅキは無表情で言い放った。

「なんでだよ!?」
「・・・自分は、そんなことできねえかな」
ヤヅキの言うことが理解できずに首をかしげる一同。

「・・・これは、ヤブクロンを含め、子供たちの気持ちが現れたものだと思うんだ。」
「?」
「“一緒にいたい”・・・というね」
静かに言葉を紡いでいく、。

「それを片付けるなんてこと、したくないんだけど。でも、崩れて子供たちが怪我したらこまるしね。でも、ユリさんの幼稚園に自分が口をだすのはどうかと思うけど・・・一緒にいたいと言う気持ちは本物だ。・・・少し、考えてやってよ。」
それだけ言うと、スクラップの山に向かってゆっくり歩いて行った。

ヤヅキの足が止まった。
「・・・はぁ」

それに気づいた皆が何かと見てみると、子供たちが出てきた。

「ここはぼくたちヤブクロンせんたいのひみつきちだ!!
おまえたちおとなははいってきちゃだめだぞ!!」
「「「「そーだそーだ!!」」」」

ああ、戦隊モノか・・・。
これまた厄介なことになってきた。

「・・・めんどくさいことになってきたな。シェイミ」
「ミィ」





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