#16
31,32
時計塔でダルマッカ達と別れて、昼時になった頃。「ん?」
鞄の中で、モンスターボールの音がした。
シェイミはここに居るし、フライゴンはボールの中だし?
疑問に思ったヤヅキは、鞄の中を見てみることにした。
「ちょっと待って」
「?ヤヅキ、どうしたんだい?」
急にカバンを調べ始めたヤヅキを疑問に思いながらも、立ち止まる。
鞄の中には特に何も異常は見られなかった。
「気のせいだったのか?」
そう思い、鞄を閉じようとしたその時。
「ロトッ!!」
「バチュ!!」
鞄の中のモンスターボールから、2匹のポケモンが飛び出してきた。
「……んん?」
「ええっ!?」
「えええ!?」
「うわあ!?」
ヤヅキより3人のほうが驚いていた。
「あ、お前らは」
昨日、ポケモンセンターで会った?
と言いかけたその時。
黄色い奴と青とオレンジの奴が飛びかかってきた。
「うわっと」
黄色を受け止め、青とオレンジを見ると頭に乗っていた。
「……えっと、ヤヅキ、こいつらはヤヅキのポケモン?」
「いや……昨日、ポケモンセンターで会って……ポケモンフーズやって、別れた。」
今回はポケモン図鑑の存在を忘れていなかったらしく、図鑑を取り出してしらべた。
「えっと、ちっこいのがバチュル、オレンジと青がロトム……ねェ? お前ら、なんで此処に?」
[えっとね、ヤヅキの電気、美味しいんだ!]
[そうそう。自分もそう思う。]
バチュルの後をロトムが続けた。
「……いつ食ったんだよ」
[ヤヅキが寝てる時]
こいつら、どうやら戻ってきてから侵入してたらしい。
[それに、自分は昨日のフック曲げるの手伝ってあげたんだから!]
「え、あれ、お前のだったの?」
ヤヅキの脳裏に浮かぶのは、火力が足りなかった時に飛んできた炎。
[そうだよー。電子レンジに入り込んで、オーバーヒートを使えるようにしておいたんだ!]
……こいつがやったやつだったのか。
「……サトシ、ロトムって電子レンジに入り込めるのか?」
「ん、ああ!ロトムは電気製品に入り込んでフォルムチェンジすることができるんだ」
ふむ、こいつらは嘘は言ってないし、おまけに昨日の一件の手助けを陰ながらしてくれてたみたいだ。
「んで、君たちはフライゴンみたいについていきたいの?」
「ロト!!」
「バチュ!!」
「ミ!」
「何故シェイミが出てきた?……ま、ついてきたいんなら、ついてこいよ。お前らの好きにすればいいさ。」
「バチュー!」
「ロトー!」
シェイミと戯れる2匹を見て、フライゴンを出した。
「話、聞いてた?」
聞いていたらしく、大体の状況は飲み込めているようだ。
「というわけで、よろしくな。」
そう言ってボールへと戻す。
「フライゴンも、わざわざ出してゴメンな」
「フライ」
とりあえず、3体をボールに入れて3人の方を向く。
「待たせて悪かったな。」
「いや、それはいいんだけど一体何が起こってたの?」
状況がつかめなかったデントが訪ねてきたので、簡単に説明した。
「そんなことが」
「まーね。フライゴンの時もこんなだったし。」
「やっぱり、ヤヅキにはポケモンを引き付ける『何か』があるんだね。一層君に興味が湧いてきたよ」
「そうっすかね」
軽く流して立ち止まっている3人に進むよう促すヤヅキだった。
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