#4



7 ビクティニ

「美味しかったか?」

「ティ二!」

ピースサインを作るビクティニに皆がそれぞれ自己紹介をした
少しは警戒を解いて貰えたようだ

バトルでビクティニが力を貸してくれた事に感動したサトシが、ビクティニを振り回した
サトシは楽しそうだが、ビクティニの顔は見る見るうちに歪んでいった


「てぃにいいいい!!」

「え、ど、どうした?」

「あーあ、泣いちゃった」

「急に振り回したりするから……」

泣きじゃくるビクティニをそっと抱きしめる
……うん、落ち着け
とりあえず落ち着け

「悪かったな
怖かったか?」

「ティ、」

「そうか、よしよし」

しばらくあやしていると泣き止んでくれた
サトシも反省してビクティニに謝った
どうやら許してくれるらしい

「てめぇは乱暴にするな」

「ごめんって、嬉しかったんだよ
ビクティニに会えたし、助けてもらったし」

「ティニ」

「気にしてないってさ」

「そっか
ありがとうな、ビクティニ」

すっかり打ち解けたビクティニとサトシ達は一緒に走っていく
なんであんな元気なんだよ
ったく、ついてくこっちの身にもなれ

「疲れた」

「大丈夫かい?
今日この街についたばかりだしね…」

「もうちょっとゆっくり行けよ…」

気付かぬうちに、随分と街の外れまで来てしまった様だ
…なんだあれ
生い茂る木々の中に、違和感を産む様な柱が立っている

それにきづいたビクティニは、びたりと動きを止めた

サトシが不思議そうにビクティニを見る
ビクティニが急に止まったのを不思議に思った様だ

「ビクティニ、行こうぜ!!」

「サトシ、止まれ!!!」

何か嫌な気配を感じ取ったヤヅキが叫ぶが、時既に遅し
サトシに引っ張られるビクティニは、何かに弾かれた

驚いたビクティニが何か技を繰りだそうとする
サトシに向かっていたその技も、壁のようなものに阻まれて消えた

「ティニ…」

[怖い、]

「……?
あれを、怖がってるのか」

サトシが手を伸ばす
それを避けたビクティニは姿をくらませた

精一杯の声でビクティニを呼ぶが、戻っては来なかった


「……あの柱を、怖がってる」




8 ビクティニの話

一旦街へ戻った一行は、カリータに連れられてあの売店へやってきた
どうやら店主のおばさんこと、ジャンタはカリータの母にあたる人間だった

ビクティニの事を話したデントは、街で一番落ち着ける場所を尋ねた
確かに、今はそういう場所が良いだろう

自然豊かな道をジャンタを先導に進んでいく

「たぶん、ビクティニは結界を嫌がったのね」

「結界?」

「この街には見えない結界が張られていて、ビクティニはその外に出られないと言われているの」

「あの紫の壁か……」

ビクティニはあの結界の外には出られない
…どれだけ長い間、この地に縛られて居たのだろう

そんな事を考えていると、見知った人物と再開した
ドレッドだった
彼はカリータの兄に当たるらしい

………髪の毛の謎が深まった

さらには町長のモーモントも居て、彼らが家族である事もわかった




「ビクティニ、お前が結界の外に出られないのを知らなかったんだ!」

「姿を見せて、おねがい!」

「美味しいマカロンがあるよ!」

「食い意地はったサトシに食われちまうぞー」

モーモント宅の果樹園の中にビクティニの影を探す
果樹園には色々とポケモンが居るらしく、あチョロネコを目の前にしたデントは少し青くなっていた

その中の一匹が、ピカチュウに手招きをした
何処かに案内しようとしてくれている様だ

案内させられたのは風車の近く
いい場所だ

ポケモン達が声を上げる
するとビクティニの影が目視できた
しかし、サトシの姿を認めたのか、すぐに隠れてしまう

「ビクティニ、いるんだろ?
さっきは嫌な思いをさせて悪かった!
ホントにごめん!!」

ビクティニを探しながら足元を見ずに歩いて行くサトシはもう少しで水に落ちそうである

「あぶねっ」

「うえあっ!?」

落ちそうになったサトシの襟を掴む
が、バランスを崩したらしいサトシは起き上がれない

「て、てめぇ早く、戻れっ」

「無理言うなよっ!」

そして更に、フードが引っ張られた
ビクティニだった

「ビクティニ!」

「っ、うわっ!!」

サトシがビクティニに気を取られたせいで一気に傾いた
巻き添えを食らって水に落ちる

「…、あはは!!」

「ティニティニー!」

仲良く水を掛け合う二人を見つつ、びしょ濡れな服をどうするか考えた






「あーあ、ぐっしょり」

「大丈夫?」

「ほら、タオル
せめて髪の毛だけでも拭こう」

「あぁ……へっくしっ!
水冷た……」








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