01
聞こえて来るのは波の音に海鳥の陽気な声。
そんな心地よい音を聞きながら俺は港のそばの桟橋から、船の積み荷をおろしている船乗りの人達を眺めている。
午後一番の暖かな日差しを浴びて、意気揚々と仕事をする船乗り達はとても生き生きしていて、見ているこっちも元気になれるね。
……さてと、元気ももらった事だしそろそろ場所移動しようかな。
俺は寄りかかっていた桟橋の手すりから離れ、元気な船乗り達に背を向けて町の中心の市場の方に歩みを進め……ようとしたけどやめた。
……だっていつの間にか俺の横に小さい女の子がいたんだもん。
桟橋から見える海をじっと見つめながら泣いてる。
どうしたんだろ?
「ねえ、君。どーしたの?」
俺が声をかけると女の子は顔をこちらに向け、俺の顔をじーっと見てきた。
「……どーしたの……?お母さんとかとはぐれちゃったの?」
今度は俺の問いに茶色の髪の毛を振り乱す勢いで、頭を横に振った。
「じゃあ何があったの?友達と喧嘩とか?」
「……お姉ちゃん……」
「え?お姉ちゃん?」
ぼそりと女の子が言った言葉から何も連想出来ずに俺は思わずオウム返しに聞いてしまった。
だけど、これをきっかけに女の子はぼそぼそと事を話し始めた。
「……あたしね……お姉ちゃんと喧嘩……」
「お姉ちゃんと喧嘩しちゃったんだね。……どうして?」
「お姉ちゃんが……お姉ちゃんが……怒るの……」
どうやら話を聞くかぎり、この子はお姉ちゃんに怒られて逃げて来たらしい。
そんで意地を張ってお姉ちゃんのところに帰れないと。
うーん……どうしたもんか……。
「……じゃあさ、こんなところにいるのもなんだから市場の方に行って気分転換でもしようよ!ほらほら!行こう!」
「え……、お……お兄ちゃん!待ってよ……!」
女の子の手を取り走り出すと初めはためらっていたが徐々に自ら走り出した。
「お兄ちゃん速いよ……!」
「あ、ごめんね!」
走る速度を落とし、女の子に合わせる。
……てかお兄ちゃんって照れるなぁ。
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