小説 | ナノ
 ラーメンをずずずっ、と汁を飛ばしながらすすり、炒飯を口に詰め込むかのように食べていく海をみて、向かいに座る増岡 晋汰(ますおか しんた)は、嫌そうに顔をしかめた。

「汚ぇ」
「あ!? なんか文句あっ……りますよね、スイマセン」

 絶対零度と言っても良い眼差しに海はすごすごと引き下がって、机の上にあるナプキンをとり口元やら机など汚したところを拭き取った。それを確認してから、晋汰はカルボナーラを食べる。同じ、平凡なツラをしているのにどうしてここまでオーラが違うのだろうか、と海はため息をついて恨めしげに晋汰を見つめた。

「……なに、気持ち悪ぃ」
「きもっ……! ひでぇよぉ……」
「事実じゃん」
「ううう……」

 ぐさぐさと晋汰の言葉の矢が突き刺さった海は机にべったりと頬をつけて泣き真似をした。

「うぅ、なんで晋汰は俺にだけ冷たいんだよー……。もっと優しくしてくれよー……」
「お前なんかに媚び売っても意味ねぇ」

 キッパリとそう言い切ってから、晋汰はさらに嘆く海をほったらかして食べることに専念した。
 周りからみても、上品に見えるように細心の注意をはらう。これは、この美形至上主義な学園にとっては常識とも言えることだ。容姿が受け入れられないなら、行動で示す。それを晋汰は徹底しているだけだ。
 けれど、海がそんな器用なことを出来るはずもなく、現に食事中にも関わらず机に頬をあてるなど行儀が悪いにもほどがある。しかし、海がこの学園で普通に生活を送れているのは、誰に対してもフレンドリーでとっつきやすいからだ。勿論、きちんと境界線はわきまえているので親衛隊持ちの生徒などとは、むやみやたらに接触しない。そこが、この学園からは気に入られているのだ。
 また、その性格が梅を引き寄せたといっても過言ではない。
 晋汰は梅と海、この二人がどこで接触してどのように愛情を育んできたかは知らないが、まぁ楽しそうだから良いんじゃないか、と思っている。
 ちょうどカルボナーラを食べ終わり、まだうだうだとしている海を見る。面倒臭いけれども、ここで放置すれば数日はこの状態なので仕方なく晋汰は重い口を開いた。

「で、理由は」
「!! しんたぁあぁぁっ!」

 喜びのあまり、抱き付いてこようとする海を視線だけで窘めて、晋汰は話を促す。海は渋々といった感じで、押しとどまってからポツポツと話始めた。

「……えっと、俺って、いつも梅に流されちゃうんだよ」
「……」
「だから、それにイライラしててさ……」
「……」
「あいつ、変態だし、俺様だし、絶倫だし……」
「……」
「良いとこっていったら、顔ぐらいだけど……」
「……」
「……やっぱり好き、なんだって思ったらなんか、もっとイライラしてきて……」
「……海、後ろ」
「へ?」

 晋汰に言われて、海が後ろを振り向くとそこには満面の笑みを浮かべた梅がいた。

「!! え。ちょ、おま、聞いて」
「全部聞いた。そんなに俺のことが好きなら仕方ねぇな……」
「え! っめ、ん」

 仕方ないと言いつつも、梅の顔はニヤけっぱなしで二人は熱いキスを交わす。昼時の食堂とあって、たくさんの生徒が行き交うというのに、今聞こえるのは淫らな水音だけだ。

「っん、はぁ……」
「海……」

 やっと唇を離したかと思うと、海はまともに立つことが出来ず、ひょい、と梅に姫抱っこされる。そして、梅はそのまま悠々と食堂から出て行き、食堂内に悲鳴がわきあがったのは言うまでもないだろう。






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