「すみません、我慢出来なくて……」
顔を赤らめて言う名賀はなんともいえない色気を漂わせている。直視出来なくて、俺はそっと視線を外した。
「別に、嫌じゃなかったから良い……けど、場所は考えような」
そして、恥ずかしさを誤魔化すためにハハハと笑ってみたが部屋はシーンとして気まずくなってしまった。
どうしようか、と悩んでいるとギュッと抱き締められた。
「な、名賀?」
いきなりのことに声が裏返ってしまったが仕方ない。
俺があわあわとしていると名賀は耳元で囁いた。
「ここじゃなかったら良いんですか……?」
「っ!」
そう言って名賀は俺の太股に硬くなったものを押し付けてきたのだ。
恐る恐る視線を下に向けると名賀のズボンが盛り上がっているのが確認できて、間違いじゃないと分かる。さっきのせいで空気が白けたと思っていたが、どうやら違うようだ。
「あ、あのな。ここ以外でも駄目……じゃないけど……その、する場所が無いってか……俺ん家、壁薄いし!」
決して名賀とするのが嫌なわけではない。恥ずかしいのだ。ついでに言うと、少し性急すぎる気がするし今すぐしなくても、心の準備が出来てから……と内心思いつつ、名賀から逃げるような言葉を紡いだ。
すると名賀は俺の耳に唇が触れるんじゃないか、と思うほど近付いて言った。
「俺の家、今日……誰もいないんです」
「!」
「だめ、ですか?」
やっぱり名賀はずるかった。
名賀の押しに弱い俺が断ることが出来るはずもなく、気付けば頷いていて名賀の家にお邪魔していた。
今、ちょうど腰掛けているベッドでするんだと思ったら恥ずかしさで死にそうだ。けれど今さら、逃げることも出来ないし手持ちぶさたにそわそわしていたら名賀が飲み物を手に部屋へ入ってきた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
飲み物を受け取るときに、ちょっと指先が触れ合うだけでも馬鹿みたいに肩が跳ねる。誤魔化すように、もらった飲み物にすぐ口をつけたが顔の熱がひくことは無かった。
隣に座った名賀を横目で見ると、名賀もコップを傾けていた。緊張しているのか、と思うと少しほっとした。
「……体操着は週明けに返せば良いですよね」
「う、うん」
結局、破れたシャツを戻すことは出来ず保健室から体操着を拝借したのだ。上は体操着、そして下は制服というちぐはぐな格好だというのに名賀はかっこ良かった。今は私服に着替えてしまったが、色んな姿の名賀を見れて嬉しい。
「……その、どうすれば良いんでしょうか」
「え?」
「さっきは、勢いだったから……。俺、したことないんで何をすれば良いのか……」
こっちを向いた名賀の瞳にはうっすらと涙の膜があって、本当に困惑する姿にきゅんとした。やっぱり年相応な姿が一番可愛らしい。
おかげで少しだけ緊張がほぐれたが、俺はきちんとリードしてやれるだろうか。残念なことに俺はそういった経験が少ないし、勿論のことだが相手が男なんて初めてだ。不安ばかりだけど、チワワみたいな瞳で見つめられた頑張るしかないと思わされる。
俺は口にたまった唾を飲み込んで名賀を安心させるため、笑った。
「大丈夫。俺が教えてやるから」
「……っ!」
瞬間、名賀の顔が真っ赤に染まる。そして固まったままの名賀の唇にそっと口付けた。
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