小説 | ナノ
「要、気持ち良い?」
「…気持ち良い…」

うっとりと要は至福の表情でうわ言のように返事をした。

一日の練習が終わりやっと二人っきりの時間だと、要は思う存分毅に甘えていた。
一緒に風呂に入りたいと駄々をこねたが、毅にそれはちょっと…と拒否されても要はめげなかった。毅に先に風呂に入ってもらいその後、心行くまで残り湯を堪能したのだ。
そんな要の変態行為などつゆ知らず、毅は風呂から上がった要の髪の毛を優しい手つきで乾かしてやった上に今はマッサージまで施している。
これが他の四人は体験出来ない同室者の特権である。要は心の中で他の四人をせせら笑ってやった。

要の背中に跨がって毅は肩から肩甲骨、腰まで程よい強さで指圧する。高校に入るまで毎晩父にマッサージをしていた毅の手つきは慣れたものだ。
その心地よい刺激に要はうっとりすると同時に自分の上に乗る毅の重さと感触に興奮する。けれど悟られないようにと必死に息を落ち着かせた。

「…すげぇ固い…」

しかし要は純粋に呟く毅の言葉さえ、違う意味に捉えてしまう。
もし今仰向けだったならば迷うことなく、毅に襲いかかっていたであろう。
要が悶々してるうちに毅は足の方へと取り掛かっていた。

ずっと走り回って酷使した足には、かなりの負担がかかる。それを癒すために今まではセルフマッサージをしていたという要に教えてもらった手順を思い出しながら、毅は筋肉をゆっくりとほぐしていった。

「痛くない?」
「………ん、大丈夫…」

力加減を確認すると、毅は黙々と作業に取り掛かった。その真剣な表情を見れないことが要の悩みの一つであったりする。
ふくらはぎを揉みしだいた後、毅は足首から太股へと左右両方の手を使いさすってからパン、とふくらはぎを叩いた。
それと同時に要は仰向けになって毅を見つめた。

「はい、終わり」
「……ありがとう…」
「どういたしまして」
「…毅、一緒に寝よ?」
「だめ。子どもじゃないんだから、一人で寝なさい。………拗ねてもだめだかんな」

む、と要はむくれたが心地よいマッサージのおかげで体は温まって、眠気が凄まじい。
もう少し粘りたかったが早く寝るように、と掛け布団をかけられ、しかも背中をぽんぽんと優しく叩かれると呆気なく瞼が落ちていってしまった。

すぅすぅ、小さな寝息が聞こえるのを確認してから毅は要の髪の毛を撫でる。
要の子供っぽい寝顔を見て柔らかい笑みを零し、毅はそっと部屋を出ていった。



***

優の部屋に毅が赴くと、相変わらずの爽やかな笑顔で迎えてくれた。
優は成績優秀のため、一人部屋なので同室者を気にする必要はない。だから堂々と共有スペースに設置されてる大きなテレビで鑑賞出来る。
毅の中のこっそり見る、とは次元が違い戸惑ったが楽しそうにどのDVDを見るか選別している優を見るとまぁ良いか、と思ってしまった。

「毅はどんなのが好き?」
「ど、どんなのって……」
「例えば…ほら。治先輩は、こういうの好きだよ」

そう言って優が選び出したDVDのパッケージには少女を緊縛!凌辱監禁!と毒々しい色の見出し文字に首輪をつけられて舌を出す少女の姿。その白い肌は精液によってテカテカしていた。

「……………へ、へぇ……」

毅は色々とショックを受けたが人の趣味を悪く言っちゃいかん、と曖昧な返事をした。
優はそんな毅を見て、更にあることないことを笑顔で吹き込んでいく。

「剛先輩は生粋のコスプレ好きで特に巫女が良いらしい。靖はロリコン、妹モノとかに弱い。逆に要は熟女好きで団地妻とか大好物。そんで俺はちょっとアブノーマルなのが好きだなー」
「……………」

好きな食べ物を言うくらい、サラッと凄いことを言った優に毅はどうしようもない気持ちに包まれて何も返せなくなった。




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