小説 | ナノ

すっかりマネージャー業が板に着いてきた頃、毅は一度部室内を隅々まで掃除しようと部員達が練習している間に使っていないロッカーや乱雑に置かれた段ボール箱の中の整理するため、一人奮闘していた。
やはり使ってないだけあって整理していると溜まりまくった埃が噎せ返るほど舞う。換気のために小窓を開けておいたが気休めにしかならなかった。
仕方なく段ボール箱を外に運んで一つずつ仕分けする。明らかにいらない物はゴミ袋の中へ、いる物はその用途ごとに分別しておく。どちらか判別しがたい物は取り敢えず纏めて段ボールに入れておいた。
毅はテキパキとした手つきで片していっていたが、新しく運んできた段ボール箱を開けた瞬間固まった。

「………これは…」

そこには数枚のDVDが散らばっていた。
DVDのパッケージには十八歳未満閲覧禁止の文字に卑猥なタイトルと痴態を晒す女性の写真。所謂アダルトビデオというやつである。
母親が息子の部屋を掃除して意図せず見つけてしまった時のように、毅はいたたまれなくなってしまう。けれども毅も一応、花も恥じらう男子高校生だ。興味が無いわけが無い。
段ボール箱を開けたまま、どうしようかと毅がうんうん唸っていると後ろから急に声を掛けられた。

「何してんの?」
「っ!?」

毅が驚いて振り向くとそこには爽やかに笑う優がいた。

「びっくりしたぁ…」
「そう?あんまり驚いた感じに見えなかったけど」
「いやいや、かなり驚いた…。あれ?練習は?」
「只今休憩中!」
「…サボリか、ちゃんとしろよ…」

もし仮に休憩中だとすれば優だけでなく全員が部室に戻ってくるので毅は直ぐに優の嘘を見抜いた。けれど優は嬉しそうに笑って反省の様子は見られない。
毅がため息を吐くと優があ、と声をあげた。

「何?」
「その箱。中身見た?」
「……まぁ、うん…」

居心地悪そうに答える毅を優はニヤニヤしながらしゃがみこんで覗いた。

「毅って、淡白だと思ってたんだけど意外とすけべ?」
「…すけべじゃねぇけど、……興味くらいあるよ。男だし…」

顔をトマトのように真っ赤にして毅はプイと横を向いた。
正直だが耐性がないところが可愛いなぁ、と優はニマニマする。そして元来、彼の中に住みついている悪魔が口に弧を描いた。

「見たい?」
「………………うん…」
「じゃあ、今日の晩。二人だけでこっそり鑑賞会しようぜ!」

消え入るくらい小さい声で返事した毅の肩を叩き優は強引に決めたが、毅は断ることなく顔を真っ赤にしたままコクリと頷いた。
二人だけでこっそり、というのがみそだ。

優は取り敢えず段ボール箱の中のDVDをすべて自分の鞄の中へと移動させる。今どれを見るか選びたいのは山々だが、そろそろ部活に戻った方が良いだろう。
そして要が寝たら俺の部屋に、という約束をしてさっさと体育館へと戻ってしまった。

毅はそんな自由気儘な優を見送り、密かに夜を待ちながら片付けの続きを始めたのだった。




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