小説 | ナノ
転入生はこの世の終わりかのような愕然とした表情をしている。
周りの奴等は、驚き目を見開いて俺と萩原を交互に見るもんだから居心地が悪くて仕方なかった。

「は、ははは…お、伯父さん…何してるの?嘘だよね?そうだよね?……だって俺は…俺は…!!」

転入生は狂ったように言う。
それを呆気なく壊したのは、やはり萩原だった。

「愛されるべき存在。そう言いたいんでしょ?本当に面白くないよ、君。ねぇ。一回死んでやり直そう?」

ぶちん。機械だったらそんな音がしそうなくらいショートして回線が切れ、だらんと転入生は倒れ込んだ。
別に萩原がまた蹴ったわけではない。
転入生は肉体的ではなく精神的に脆かったようで、遠回しに萩原に死ねと言われた瞬間なんて言葉では言い表せれないほど絶望的な表情をしていた。

「咲!?」
「咲ちゃん!」

突然のことに周りの奴等は転入生に声を掛けるが、勿論返事はない。
まだ転入生に盲目な奴等のうち、激昂した一人が叫ぶように言った。

「咲ちゃんは貴方の甥なのに…っ!どうして!!」
「君も、つまらないね。ただの甥と大切な恋人だったら、どっちを取るかなんて決まってるでしょ」
「…っでも!」
「面倒くさいなぁ。もう順番なんて知らない」

そう言うや否や、萩原は激昂した少年を蹴り飛ばした。
華奢な体は簡単に吹っ飛び部屋の隅で少年は蹲って嘔吐した。辛うじて意識は保っているものの、目は虚ろで生気を感じられない。

萩原は順番がどうのこうの、と言っていたが転入生を蹴ったところで違ったぞ、なんて言える雰囲気じゃないまま次々と転入生の取り巻きを蹴り倒して行く。
素早い動きについていける者など居らず、取り巻き達はされるがままで数分後には俺と萩原しか立っていなかった。

「………もう良いんじゃないですか」

飽きることなく、萩原は倒れた奴等を蹴る。
数人は骨が折れてるんじゃないか、と危惧するほど一発一発の蹴りは強烈だった。

「んー、行弘君がそう言うんだったら止めようかな。意外と疲れるし」

スポーツして一汗かきました!ってくらい爽やかに笑って近付いてくる萩原は血なまぐさい。
思わず眉をしかめると萩原はああ、と背広を脱ぐがあまり意味は無かった。

「ふふふ。行弘君、おいで」

殴ってはいないため、差し出された手は真っ白なままで綺麗だった。
仕方なく手を取ると大きなデスクまで連れていかれて、そっと押し倒される。
相も変わらずニタニタ笑って萩原は、俺の服へと手をかけた。
俺が睨んでも萩原は止めることなくシャツのボタンを一つ一つ丁寧に開けて、痣だらけの体を晒し出した。
数分、萩原は俺の体を見たかと思うとゆっくりと舌を這わせてきた。

「っ!や、めっ…!」

ぞわぞわする感覚に抗議するが止める気配はない。
肌も髪も白いので舌がやけに真っ赤に見えて、気持ち悪かった。

俺が嫌がる様子を楽しみながら、萩原は傷を舐める。
生粋のサディストだな、そう心の中で罵倒して気を紛らわした。

「っ殺す…!」
「ふふ、出来ないくせに」

俺は萩原という男の心が読めない。
何がしたいのか、真意というものがあるのか。まぁ、ただの快楽主義であることは間違いない。

「いつ、か…ぜってぇ、殺す…!」
「だから出来ないでしょ。ああ、でも――」

俺は萩原のことをよく知らない。
頬にある大きな傷跡の理由とか下の名前だとか。まぁ、仕事はヤクザと理事長だけっぽい。

「――でも、行弘君に殺されるなら本望だね」

けれど、不本意だが俺は萩原という男が気持ち悪いくらい悪趣味ということだけは知っていた。

おわり




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