小説 | ナノ
長かったが俺が嫌々ながらも警備員を続ける理由は要は家族のためである。
あの日から二年たった今。なんとか過ごしてきたが、全然ホモに対しての耐性なんかつかない。
むしろもっと酷くなってきている。

今までホモ現場をあまり見たこと無いのが救いだったが今日は最悪だ。
がっつり見てしまったし、まだ続けてやがる。

「本当に咲は可愛いなぁ」
「む!俺は男だから可愛くないの!」
「ふふ、可愛い」
「もう!雅人のバカ!!」

本当死ねば良いのに。
さっさと俺の視界から消えろ。裏門なんかにいねぇで校舎に向かえホモ。
心の中で毒を吐きつつ俺はコーヒーを拭いた雑巾を洗って乾かす。

警備員室は広く、過ごしやすい。
ミニキッチンや小さな冷蔵庫に簡易ベッド。しかもエアコンにトイレとシャワーまでついていて普通に暮らせてしまう。むしろ暮らしたい。
俺の仕事は監視カメラを見てスピーカーで連絡をとって門を開閉するだけ。あとはホウキかけたり。
裏門のためか利用者も少なくて楽で簡単だが、正直暇だ。
二年前までは働き詰めで忙しい日々だったのが懐かしい。

感慨に耽っていると胸ポケットに入れてる携帯が震えた。
見てみると"萩原"の文字がディスプレイに表示されて顔が引きつった。

「…もしもし」
「行弘君?咲はもう来た?」
「咲?」
「書類渡したでしょ?」
「あ?ああ。あのもじゃ…転入生ですよね。来ました」
「何時ぐらいに来た?」
「三十分ほど前です。まだ裏門の近くにいますけど。ずっと副会長と話してます」
「そう。分かった」

意外とすぐに話が終わりホッとする。
少し声が低かったような気がする。
携帯を胸にしまっていると電話がなる。警備員室にある電話を見たが着信はなく携帯はマナーモードだし。
不審に思っていると話し声が聞こえた。

「ちょっとごめんね。はい。………すみません…はい………はい。……分かりました。今すぐ向かいます」

どうやら副会長の携帯だったらしい。
さすがに相手の声まで聞こえないが、会話中の言葉遣いから副会長より立場が上の人からということは分かった。

「咲。携帯の電源切ってた?」
「え?そんなことないぞ!ちょっと待って…。え!!」

副会長に言われて転入生がポケットから携帯を取り出して開く。
そして大声をあげて顔を真っ青にした。

「着信十四件…。やばい、伯父さんに怒られる…!」
「伯父さん…?」
「あ!うん!俺の伯父さん此所の理事長やってるんだ。凄いだろ!」
「じゃあ咲の家って萩原グループ!?凄いじゃないか!」
「まぁな!」

甥っ子がもじゃもじゃとか可哀相だな。
バカっぽいし、ホモだし。いやホモは伯父もか。

「ていうか雅人、さっきの電話は…?」
「あ、そうそう。理事長が早く来るようにって。歩きながら話そう」
「あっ!手繋ぐな!恥ずかしいだろ!」

恥ずかしいのはお前等だ滅びろ。
多分、萩原は約束の時間に来ない転入生に何度も電話したが出ない。だから俺に電話して、それから案内を任せていた副会長に注意をしたんだろう。
そこまで世話を焼くってことは甥のことを可愛がっているのだろうか。
本当に趣味が悪い。




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