「…泣きそう、か」
裕信さんは自嘲気味に笑って、俺の髪の毛を掴んで強く引っ張った。
すぐ目の前に裕信さんの瞳があり、その幻想めいた色に吸い込まれてしまうかと思った。
「…慰めてくれよ」
べろり、と眼球を舐められる。なんとも言えない感触で鳥肌が立った。
そのまま舌は唇にまで移動して啄むように触れてから、口内を犯した。
俺は抵抗せずに、それを受け入れて答える。お互いの舌が溶けるんじゃないか、ってぐらい嬲りあってその快感に酔い痴れた。
「ふ、ん」
裕信さんの骨張って大きな手が俺の尻を撫でる。すでに衣服は剥かれてるので、アナルへの侵入は早かった。
深いキスをしたままアナルの入り口を苛められるから上手く呼吸が出来なくて、頭がぼんやりした。
「ん!んぅ、あ、んっ」
さっきまでトラさんのペニスを甘受してたアナルは、易々と長い指を受け入れて快感を欲した。
けれど裕信さんは、わざと前立腺を外してゆっくりとじわじわ責めてくるので思わず腰が揺れた。
「っは!や、…いじ、わるい…っ」
「何が?」
「〜っ!そ、こじゃなくてぇ…」
やっと唇が解放されて抗議すると、耳を甘噛みされて唆される。
敏感になっている体は裕信さんの吐息さえも、逐一反応して悶えた。
「なら自分でやれよ、手は貸してやるから」
俺の手を掴んで自身の手を握らせた裕信さんは良い笑顔をしていた。
さっきまでの裕信さんはどうした、と叫んでやりたい。
しかし、快楽に従順な体は甘美な囁きに勝つことはできず俺の手は恐る恐る動いた。
「うあっ、あ」
いつもと勝手が違って変な気分だ。裕信さんが体の力を抜いてるせいで上手いこと前立腺にピントがあわない。
「っあ、あ、あ」
手を動かす度にぐじゅぐじゅとトラさんの残した精液が掻き混ざる。ぬるぬるしたそれは、よい潤滑油となるが音が卑猥すぎて恥ずかしかった。
「ひろっ、のぶさん…指曲げて…!」
「ん、ここ?」
「はう!あ、あっ、あっ」
ちょうど前立腺をかすめた指のあまりの快感に背をのけ反らせると、腹の筋にあわせて舌を這わせられた。
つつつ、と舌は臍までつたうとリップ音をたてて離れる。
そんな少しの刺激にも俺の体はビクビクした。
「もっ、もっと」
「もっと何?」
「ゆびっ、まげて…ふあっ」
裕信さんは素直に指を曲げてくれたが、やはり動かす気はさらさらないようで、俺が目で訴えても微笑み返すだけだった。
あくまでも俺にやらせるってか。
抗議してやりたかったけど今は前立腺にピタリと当たっている指のもどかしさに、俺は目先の快感に縋りついた。
「あうぅ……ひあっ、んっ、んん」
手を動かせば、くちくちと前立腺をピンポイントに刺激されて頭が沸騰しそうなほど熱くなる。
「指増やして欲しい?」
もちろん、俺は誘惑に勝てるはずがなくて何度も頷いた。けれど裕信さんは一筋縄ではいかない。
「やーだ」
悪魔。そう例えるしかないだろう笑顔で裕信さんは無情にも指を抜いてしまった。
指のなくなったアナルは物欲しげにヒクンと疼く。
熱で浮かされた体が切なくて俺は、泣きそうになりながら懇願した。
「ひ、ろのぶさん…」
「んー?」
「お願い、だから…指ぃ」
「入れて欲しいのか?」
「うんっ」
「じゃあ今から俺の言うこと三つ、守れ」
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