小説 | ナノ
「こいつがまだ高1ってことは分かるよな…?」
「ああ」
「やっあ、あっ」
「…つまりこいつは未成年だ」
「そうだな」
「んっんっ、っう!」
「……未成年に手を出すのは犯罪なんだ」
「あ"?何当たり前のこと言ってんだアホ」

「うぐああ!!アホはテメェだアホ!!!ていうか止まれえええ!!!」


トラさんの仲介?によってやっと俺は裕信さんの快楽責めから開放された。
せっかく着替えた制服は精液でぐちゃぐちゃだし、体力も磨り減ってしまった。風呂でまた裕信さんに襲われそうになりつつもなんとか体を清めた頃にはもう11時過ぎだった。


「今日はもう休め」

疲れてんだろ、と俺の前に手作りの美味しい昼飯を用意したトラさんは、形容しがたい表情をしていた。怒ってるような悲しんでるような。本当にこの人は優しい。

「つうか、テメェもテメェだ!ちょっとは抵抗しろ!」
「してますよ…」

ただ気持ち良いことに弱くなってしまっただけだ。
そして俺をそんな体に仕立てあげた張本人は、トラさんによって追い出された。詳しくは知らないが今日、大切な集会があるらしい。

「……第一、俺は借金してる身ですし我が儘言えません」
「…でもよ」
「別にセックスは気持ち良いから嫌いじゃないですし…。ただマニアック過ぎるのはってだけで」
「………そうか」

トラさんは俺とそういうのについて語るのが苦手っぽい。ヤクザのくせに(偏見)。現に今も居心地悪そうにガシガシと自分の頭を掻いていた。

「…あー、今日の晩飯は何が良い」

下手くそな話題転換もトラさんらしいな、と心の中でニヤけながら俺は鰤大根と答えておいた。



***

虎雄視点

「裕信」
「…」
「どういうつもりなんだ」
「何が」

「…彰のことだよ」

俺がそう言うと裕信は書類から目を離してこちらを見た。
急に押しかけてきた俺を予測していたのか、表情に驚きはない。

「何が言いたい」
「…お前、アイツのこと捨てるって本気か」
「本気」
「っ!なんで!!」
「なんで?」

はっ、と鼻で笑ってから裕信は机に肘をついて手のひらに顔を乗せた。普通の奴だったら見とれてしまいそうになるだろう。

「飽きたから」

にっこり。正にそんな擬音が似合うように裕信は笑った。
清々しい笑顔に、とてつもない怒りを込み上げてきて勢いに任せて裕信の胸倉を掴みあげた。

「テメェ…!」
「…」
「っ嘘吐くなよ!テメェの態度見てて分かんねぇほどバカじゃねぇんだよ!!本当はお前、彰のことっ」

「トラ、………黙れよ」

そう言った裕信の祖母譲りの緑がかった瞳は細められ、俺を睨み付ける。まるで蛇が全身に巻き付いているような緊迫感に思わず、唾を飲み込んで体を強張らせた。

瞬間、脇腹に衝撃が走った。

「っぐあ!」

いきなりの衝撃に重心が崩れ、倒れ込んでしまった。どうやら蹴られたらしい。ジンジンする脇腹に相変わらず重い蹴りしてやがる、なんて少し場違いなことを考えた。

そんな俺をよそに裕信は、少し乱れた服装を正してからまるで虫でも見るような目で俺を見下げて言った。

「テメェの気持ちを押し付けんじゃねぇよ」

クソが、と続けて裕信は荒々しく部屋を出ていってしまった。



「…お前だって好きなくせに」

静かになった部屋には俺の声がよく響いた。




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