小説 | ナノ
「…すぐ帰ってくるからな!」
「ディアス様…!」
「さっさと行け」

数十分は別れの挨拶をする二人にたかだか一週間ぐらいで、と朝にディアスから話を聞いたハヴェルは呆れたように言った。

「うるさい!なんだか知らねぇけど機嫌悪いからってこっちにあたるなよ!」
「……」

ディアスは怒鳴ってから最後とばかりにレトを抱き締めた。
レトもぐずぐず泣きながらも抱擁に答える。
昨日の晩のことなど知らないハヴェルは、より仲良くなった二人を不審に思いつつ内心ドキドキとしていた。

機嫌が悪い。
ディアスが放った言葉は的を射ていた。
それというのも、昨日嬉々として女漁りに出たものもいつもより断然性欲を発散出来なかったのだ。
女が捕まらなかったわけではない、ただ満足出来なかった。
女の甲高い嬌声やら媚びるような仕種に噎せ返る香水の匂い。何より幾人もの男を受け入れた膣内では射精に至るまでかなりの時間を要した。
いつもはこんなことは思わないし感じない。
その要因をハヴェルは既に知っていた。

ディアスと未だに抱き合っている少年を見る。
涙で濡れた頬は赤く染まり必死にディアスに抱き付く様は一昨日の行為を彷彿とさせた。

恐怖に怯えて堪える表情。
あの無垢な体を支配する優越感。
倫理に背く快感。

様々な思いがハヴェルの中で交差する。
今すぐにでも犯してぐちゃぐちゃにしてやりたい。
最後には、その光景を脳内で想像しながら昨日は代替として女を抱いていた。

タイミングよく今日からディアスは出張。
再び自分の中の悪魔が微笑んだ。



「…じゃあ行ってくる!」
「いってらっしゃい!気を付けて!」
「…」

ディアスの姿が見えなくなるまでレトは手を振った。
見えなくなると濡れた顔を拭って気持ちを入れ替えるために大きく深呼吸をして自分を落ち着かせる。
そして隣に立つハヴェルに向き合った。

「あ、あの!ハヴェル様もお仕事頑張って下さい!」
「……ああ」

緊張しているのかレトの声は震えている。
ハヴェルは頭を下げるレトに軽く返事をして、稽古場へと歩き出した。

「夜が楽しみだ…」

レトに背を向けたハヴェルの顔には珍しく笑みが零れていた。




レトはディアスのときと一緒で、ハヴェルが見えなくなるまで見送っていた。
そして大きな背中が消えると共に息を吐き出した。

「……二人っきりかぁ」

決してハヴェルが嫌いなわけではないがレトは思わずうなだれてしまう。
一昨日のことがあって、しかも今日は機嫌が悪い。
ディアスと抱擁を交わした際には気付かないふりをしていたが射抜くような視線に内心タジタジで、余計涙が零れた。

「…今日は、ハヴェル様より後にお風呂はいろう…」

自分にそう言い聞かせてレトは家事をこなすために部屋に戻ったのだった。




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