小説 | ナノ
脱衣所でさっさと服を脱いで風呂に入ると熱気が込み上げた。
ディアスはハヴェルと違い湯に浸かりたいタイプの人間で、浴槽には既に湯がはってある。
レトは基本的に風呂の使用方法は部屋の主に従うが、どちらかと言えば浸かる方が好きなのでディアスと入浴するのはワクワクした。


「次は体洗うぞー」
「あ、おれがやります!」
「ん?ありがとな」

お互い自分で頭を洗い終わり、次は体と言うとレトは張り切ってスポンジを石鹸で泡立てた。
そしてディアスの後ろに回って、ゴシゴシと一生懸命大きな背中を擦る。
ディアスも抵抗することなく受け入れた。

「おー…きもちいい。上手くなったなぁ」
「へへへ…」

ディアスに褒められてレトは照れたように笑った。
最初の頃は力加減が分からず痛いくらいだったのになぁ、とディアスは思い返す。

「次はレトの番」
「ひゃ…!」
「こら」

毎回一緒に風呂に入る度、わざわざ気を利かして背中を洗ってくれるレトが可愛らしくてディアスは百倍返しと隅々まで洗ってやる。
しかしレトは、くすぐったいらしく体を捩って逃げようとするのでディアスは軽々とレトを自分の膝の上に乗せて固定した。

「動くな、ちゃんと洗えないだろー」
「だって、くすぐったいんですもん」
「だからってなぁ…。ん?」

口を尖らせて反論するレトにディアスはため息をついてから気付いた。
ちょうど腰の辺りに痣がある。それも両方。
さっきまで気付かなかったがよく見るとそれは痛々しく、木曜日に一緒に入った時には無かった痣にディアスは不信感を覚えた。

「なぁ、レト。これどうした?」
「え?」

ディアスが優しく刺激しないように痣をなぞるとレトは首を傾げてディアスの示す部位を見た。

まじまじとレトは自分の腰を見て気付いた。
ちょうどくびれの辺りにあるそれは昨日ハヴェルに逃げないようにガッシリと腰を掴まれてていたせいでできた痣であると。

「っ、あ…わからないです」

そして咄嗟に嘘を吐いた。
ハヴェルとのディアスに昨日のことは言わない、という約束を思い出したのだ。
悟られませんように、と心の中で祈りながらレトはなんとか平然とする。

しかしディアスはだんだんとレトを追い詰めていった。

「分からないことはないだろう?こんなにハッキリした痣…」
「ほ、本当に分からないんです…」
「しかもこの痣、手形っぽくないか?」
「どっ、どこかでぶつけたのかもしれません!」
「…そんな否定しなくても。………まさかとは思うけどハヴェルの仕業か?」
「え!?ち、違いますよ!」
「………」
「本当ですもん…」
「ちょ!泣くなって!!」

少しばかり強引に尋問され、切羽詰まったレトは黒い瞳から涙をぽろぽろこぼした。
ディアスは慌ててレトを宥めるが泣きやむ気配がない。

考え直してみるとハヴェルもこんな年端もゆかぬ少年に乱暴するなどあるはず無いのだ、とディアスは今はとにかくレトの涙を止めることに専念した。
少しのわだかまりを残して。



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