小説 | ナノ
「え?」
「俺はお前を強姦した」
「ご、ごーかん?」
「…知らないのか」

そう尋ねると申し訳なさそうに頷くレトにハヴェルは内心驚いた。
いくら奴隷といっても少しぐらい性の知識を持っているだろうに。こんな奴がいるとは。

感心しつつハヴェルは考えた。
このままレトに強姦の意味を教えたとすればおそらくレトは泣きじゃくり、そのうちディアスにバレるだろう。そうとなれば、ハヴェルはディアスとの約束を破った上に少年に手を出した変態になる。
いくら元々ディアスがレトを連れて来たといってもそれは冗談に近いことでありハヴェルの行為は倫理観を疑われるものであり、自分がこっぴどく説教されるのは目に見えていた。

だが、意味を教えずレトが勘違いしてるままにしといてディアスに対しては口止めすれば良いのではないか。
そう自分の中の悪魔が囁いた。

そして、ここ二週間ほどディアスによってかなりの禁欲を強いられて鬱憤が溜まっていたハヴェルは瞬時に悪魔の囁きに乗った。


「…分からないです」
「別に構わん。それよりも」

ちょうどタイミングよく返事をしたレトに心の中でニヤリと笑ってからハヴェルは言う。

「昨日のことはディアスには言うな。分かったか」

ジトリ、と睨み付けられレトは頭が取れるのではないかと思うくらい首を上下に振った。
それに満足したハヴェルは一週間ぶりの休日を楽しむため颯爽と部屋から出ていってしまった。


「もう…怒って、ない…?」

残されたレトは閉まったドアを見てから呟く。
それと同時にカチンコチンだった脳みそがゆっくり溶けていき、先ほどまでの恐怖感が消え安堵した。
手にあるココアをベッド脇のテーブルに置く。
そして今は休もう、と強張る体を叱咤しいつもの寝床のソファまでたどり着くと泥のように眠ったのだった。



***

再び目を覚ましたときには部屋は橙色に染まっていた。
ソファに座り、窓の外をぼんやりと眺めているとドアをコンコンとノックする音が聞こえた。
まだ意識ははっきりしないが体の痛みに耐えつつたどたどしい足取りで玄関までいき、ドアを開けるとキラキラと光る髪の毛が目に入った。

「ディアス様!」
「おー。昨日は行けなくてごめん、ちょっと用事があって」

思わずレトが抱き付くとディアスはそれに答えて優しくレトを抱き締め返し頭をクシャクシャと撫でた。
その心地よさにレトは目を細める。

レトを買ってから二週間あまり、ディアスは毎日レトの様子を見に来ていた。
いくらハヴェルの奴隷としてレトを買ってきたとしても、生来世話焼きなディアスはレトが気になって仕方なかった。
きちんと食事をしてるのか、風呂に入ってるのか、ハヴェルに苛められていないかなど。
ハヴェルにお前の部屋に置いたらどうだ、と言われる始末だったがハヴェルもディアスにとっては世話を焼く対象なので、折角のハヴェルの下半身のストッパーであるレトを離すことは出来ない、と心を鬼にして我慢している。


「よし!少し早いけど、一緒にお風呂入ろっか」
「はい!」

元気よく返事するレトを軽々と抱き上げてディアスは自室へと移動した。
ハヴェルが女を連れ込む火曜日と木曜日。そしてハヴェルもディアスも休暇である日曜日は一緒に風呂や食事に就寝は当たり前になってきているためレトは素直に受け入れたのだった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -