「ゆ、きくっ、んぅあっあ、ゆ、きくんっ!」
「ん?」
「きもち、いっ、ふあっあっあう、きもひっよぉ……!」
幸君は俺をベッドに運んでから、前は一切触らずにアナルばっかり苛めていた。それも、一番気持ち良い前立腺をわざと外して。
もどかしくて腰を動かそうとすると、指を抜かれる。恨みがましく、見つめても知らん振り。それを何度も繰り返して、やっと十分に俺のアナルがほぐれたところで挿入してくれた。
それからは、さっきまでの焦らしが嘘のように前立腺ばかりを狙ってピストンされて、やっと与えられた強い快感に俺はすぐにメロメロになった。
「あ、あっんあっ! ひっ、んぅ、んっんっ、はぅ」
「すごい、やらしい」
「あっ、おれ、やら、ひぃ、のっ、あんっん、い、っや?」
「ううん、やらしいの好き」
こめかみに優しくキスをされる。
三郎のことを考えたくなくて誘ったんだけれど、幸君があまりにも優しく甘やかしてくれるものだから、胸がきゅう、と締め付けられる。
「あ、ぅ。はっあ、あっ、ま、た、いっちゃ……!」
「良いよ、精液出してごらん」
「うんっ、み、てっ! あっあう、せ、っえき、でぅ、でちゃ、うっ、あっんんっ、ひ、ああっ!」
「っ! ふ、可愛い」
俺が呼吸を整えるたび、腹に散らばった精液は脇腹を伝ってシーツに落ちて染みをつくった。
幸君は腰の動きを緩めて、ゆっくりとピストンする。射精後の余韻に浸かりたい気持ちもあったけれど、段々とまたいっぱい突いて欲しいっていう欲求が湧いてきて無意識に唇を舐めた。
「ゆきくん、もっと」
そうねだれば、幸君は笑って前立腺を抉った。
もう、気持ち良いことで頭が埋め尽くされる。それ以外、何も考えなくて良いから楽でただ、律動に身を任せる。
すると、幸君の呼吸が段々と乱れてきて射精しそうなんだって分かる。だから、俺がわざとアナルに力を込めれば、幸君は唇を噛み締めた。
「っは!」
「あっあ、んぅ、きもち、い?」
「うん、気持ちい、いっ……あ、くっ!」
奥に精液を注がれる。びゅ、びゅ、と腰を震わせながら幸君は全てを出し尽くす。
「いっぱい、出たね」
「嫌だった?」
「ううん、好き。ね、だからもう一回」
俺が幸君の首に手を回したときだった。
まるで空気を裂くように携帯がなったのだ。ちょうど俺の真横、ベッドサイドに置かれたそれはけたたましく鳴り続ける。
「ちょっと、ごめんね」
申し訳なさそうな顔をしてから、幸君は電話に出た。
聞こえてくる会話には、予算だとか会議やらがあって、大変そうだなって思った。そういえば、三郎もよく、委員会絡みでそういう難しいことを話していた。けれど、三郎はそんなことも全て簡単にこなしちゃうから格好いいんだけど。
……フられちゃったんだ。考えないようにしてたのに快感が無くなると、つい。早く動いて欲しいなぁ、と腰を動かしそうになるのを我慢しながら待っていると、ちょうど会話が終わる。
やった! と思ったのも束の間、幸君は俺の中からペニスを抜いてしまった。
「ふ、ぇ……?」
「ごめんね、ちょっと用事が出来ちゃった」
「……そっか……」
「なるべく、早く戻ってくるから待っててくれる?」
テキパキと服を着込んだ幸君は俺とおでこを合わせてそう聞いてくる。嫌、なんて言えるわけなくて俺がうん、と答えればキスされた。それも、けっこう深く。
「っん、む、ふ」
後頭部を押さえられて、めちゃめちゃに口内をまさぐられる。少し乱暴だったけれど、気持ち良くて俺はうっとりした。でも、のめり込もうとすると唇を離されて。
「じゃあ、良い子でね」
幸君はそう言い残して行ってしまった。
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