一瞬先輩は固まると、次の瞬間顔を歪めて倒れ込んできた。
「せんぱ…?ぁ、え…っぁ、あ!?」
「っゔ、ぁ…」
耳元で先輩が呻き、びくくっと身体を震わせたと思ったら体の中に熱い物が流れ込んで来たのだ。
その熱い物と、ナカに挿れられている物が時折跳ねる感覚に先輩が達したことが分かった。
「ご、め…耐え、切れなかった…」
荒い息混じりで先輩は謝ると、顔を覗き込んで来る。
達した事で漂う気だるげな感じがとてつも無い色っぽさを出していて、それだけでも格好良いのに、その上慈しむ様な優しい眼差しを向けられてしまったら、赤面するのを止める事が出来なかった。
「丸本…今の本当?」
嬉しそうに聞かれるととても恥ずかしくて、でも伝えなければと小さく頷く。
すると堪えきれないとばかりに、ぎゅうっと抱きしめられた。
「ごめん、こんな…丸本が他の男を好きだと思ったら、カッとして…本当、ごめん…」
そこまで言って、ハッと先輩は後ろを向く。
そこには先程叩きつけられたチョコがあって。
「あれも…もしかして、俺に…?」
苦笑交じりで頷けば泣きそうな顔で再度ごめんと繰り返された。
「ごめん、俺なんて事…絶対食べるから」
あんなにぐしゃぐしゃになった物を先輩が食べる所なんて想像出来なくて、でも必死に謝る先輩が何だか可愛くて小さく笑えば、先輩は謝るのを止めてそっと頬を撫できた。
嬉しさに身を委ねようとして…重大な事を思い出す。
「でも…せんぱい、彼女が…」
「彼女?」
怪訝げな顔をした先輩をおそるおそる窺う。
「彼女に会うついでに、ぼくを…家までおくってくれてたんじゃ…ないんですか?」
「…それ、どこで聞いた?」
う、噂で聞いて…と口籠れば、先輩は小さく溜息を吐いた。
何か呆れさせてしまったのだろうか、と不安がじわりと胸の中に滲み始めたが、「…格好つけるとろくなこと無いな」という呟きと共に困った様な笑みを向けられて、自分に向けた溜息では無い事に気付く。
「彼女なんかいない。そもそも用事なんか無かったんだ、でも口実が無いと送って行けなさそうだったから…ごめん」
嘘を吐いてごめんな、と先輩は謝った。
でも、それはつまり、嘘を吐いてまで送りたいと思ってくれたんだろうか…なんて、身の程知らずな事を思って赤面すると、まるでそれを見通しているかの様に先輩は微笑んで
「丸本の、ためだけだから」
そう言われた瞬間に涙が止まらなくなった。
あんまりにも嬉しくて、一人で勘違いしていたのが恥ずかしくて、叶わないと思っていた恋が実った事が信じられなくて、そしてとても幸せすぎて。
ひぐ、と鼻を鳴らせば瞼に唇が落されて、する…っと指に先輩の指が絡んできた。
「ごめん、本当に。こんな事して嫌われても仕方が無い…けど、まだ俺の事好きと思ってくれてるなら…」
「すき、すきです、今も、前も、すきです…せんぱい」
嫌いになんて、なれません。
そう最後まで言い切る前に、言葉は先輩の唇へと呑み込まれていった。
手を繋ぎながら数えきれないくらいキスをした。
触れる様なキスから、舌を絡め合う様な深いキスまで。
今しているのは、深いキス。
舌と舌を擦り合わせる、まるで口でのセックスみたいなキスはしているだけでとろりと意識が蕩ける。
が、その蕩けた意識の中で、ふと違和感を覚えた。
――あ、れ?
なんか、もしかして…。
そろりと先輩を窺えば、目元を薄らと色気で染めながら見つめ返される。
「ごめん…また、」
そう。僕のナカに挿れっぱなしにしていた先輩の熱が、キスをしている間に再び硬くなっていて。
掠れた声で、「もう1回、シても…良い?」と問われたら、もう頷くしかなかった。
ゆるゆると先輩の腰が動き始めるが、それはさっきの様な乱暴な動きじゃ無くてとても優しい物。互いに快楽を与える動きだった。
「丸本…気持ち良い?」
「は、あ…っんっは、はい…」
「良かった」
ふっと優しく笑った先輩は本当にこちらを気遣ってくれているのが分かったけど、その瞳の奥に微かに淡い快楽に焦れている色があるのにも気付く。
先輩もあのチョコを食べてしまって、身体の火照りが治まっていないのだろう。
…それは、自分も同じで。
「せんぱい…」
「ん?」
「えっと…そ、の…僕の事は、気にしないで…せんぱいの好きに、う、動いてください…」
そう言って、これじゃあ先輩は気遣って遠慮してしまうと慌てて言葉を重ねる。
「あの、僕も…っまだ…か、身体が…あの…」
だからと言って『身体が火照っているから強く動いて』なんて恥ずかしい事を直球で言える訳なくて。
尻すぼみになりながらもごもごと呟いていると、強引に唇を奪われた。
荒々しい口付けをされながら腰を掴まれると、ガツガツとキスと同じような荒々しい動きで揺さぶられる。
でもそれがとても気持ち良くて。
心が通じ合ってるだけでこんなにも違うんだと初めて知った。
「まる、もと、丸本…っ、青っあお、青…!」
「せ、んぱ…っんあ!あぁあっ、んっんっんうぅっ!」
腰の動きは荒々しいのに、握られる手が、施されるキスが、優しい。
思いきり突き上げられて、隙間が無いくらいピッタリとくっついたまま腰を八の字にぐりぐりと回されると目の前にパチパチと火花が散るくらい気持ち良かった。
「…――――っ!!!!! は、あ!アぁ、あ…っ!や、ぁ…っせんぱ、や、たすけ…っ」
「青、あお…っ好きだ、青…っ」
「やぁあ!せ、ぱ…っあ、あ、おしり、ひもち…ぃああぁあああ!!!!」
後は、快楽を二人で貪っただけ。
何度もイって、イかして、イかされてを繰り返し、その合間に壊れた様に互いを呼んだ。
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