「あ、あう…っん、ん、っぁ!」
あれからどれくらい後孔を弄られているんだろう。
前立腺、という場所から身体中に広がる快楽は多幸感を伴って身体を痺れさせる。
腹の上には後孔を弄られながら扱かれて1度達した精液が散っていて、その事で薬は少し抜けたものの元々の量が多いからまだ身体は重い。
ちゅぽ…と濡れた音を立てて指を引き抜くと、先輩は舌を出してその指を舐めた。
白いそれは多分、ナカで溶けたチョコレート。
慣らされながら数えきれないくらい入れられたそれはホワイトチョコだったんだと、どうでも良い事を思った。
「甘…」と呟いた先輩が、此方をしばらく見つめた後覆い被さって来る。
カカオの匂いの中、いつも先輩の傍に立った時に薫った匂いがふわりと漂う。
先輩の、大好きな先輩の香り。
顔を上げると、先輩の顔が触れられる程近くにあった。目線が絡んで沈黙が広がる。
次の瞬間、先輩の身体が沈み、後孔に熱い物が捻じ込まれた。
「あ゙っ!!あ…あ、ぁ…!」
背中を反らせてその熱を受け止める。いや、受け止めさせられた。
動かない身体を酷使して本能的に逃げようとした腰を、がしりと両手で掴まれて抑え込められる。
そのまま腰を押し付けられ、ゆっくりだが確実に熱が入って来て…しまった。
会陰部にちりちりと毛が当たる感覚がして、先輩の腰がぴったりとくっついている事が分かった。
沢山弄られた事で多少なりとも柔らかくなっていたのか、後孔に引き攣れる感覚はあっても裂けた様な痛みは無い。
ただ、ナカがとても重くて圧迫されている感覚が凄い。
ドク、ドク、と脈打つ鼓動は自身のなのか、それとも先輩の物なのか。
ふと先輩は一体どんな顔をしているのだろうと、そんな余裕は無いのに浅い息を吐きながら顔を向け――どきりとした。
眉を切なそうに寄せ、歯を食いしばっている様子はどう見ても快楽を得ている表情で。
――僕で、先輩が…気持ち良くなってる。
そう思っただけで胸が痛いくらい鳴って、無意識の内に後孔をきゅうっと引き絞っていた。
「…っ丸本…っ」
それが皮切りになって律動が始まった。
最初は押し付けるだけだったのが、パンパンと肌と肌が打ち付けられる音がし始める程に段々と大きく。
ガクガク揺さぶられ、ナカを性器で擦られる度に熱い様な痛みと微かな快楽が走る。
「あ、ぁっあ、んあ!はぅっ」
「…くっぁ、丸本…まるもと…っ」
律動を続けたまま抱きしめられて、深まった結合に嬌声の声が大きくなった。
先輩、と呼ぼうとすればキスで唇を塞がれる。
ここは学校なのにとか、先輩には彼女がいるのにとか。そんな事、どうでも良くなってきていた。
例えこの行為が、男でも大丈夫ならば性処理に使ってしまえという悲しい物でも、先輩とこうやって繋がれたのならばもう、理由はいらない。
名前を呼ばれながら抱きしめ、キスまでされて。まるで恋人同士みたいだなんて幸せな妄想に浸っていたから、ぽろっと…
「せんぱ…すき…」
そう、言ってしまっていた。
ピタリと音が止まる。
さっきまでの濃厚な空気もシンと静まり、今自分が何を言ってしまったのかを気付かせるのには十分すぎた。
――僕は何を…!
先輩は律動を止め、信じられない物を見る様な目でこちらを見下ろしている。
その眼差しを受け止めるのが辛くて、怖くて、カタカタと震えながらぎゅっと目を閉じた。
「丸本…今、なんて…」
茫然としたような響きにビクリと身を竦める。
「今…俺の事、すきって…言った?」
慌てて首を横に振る。
聞き間違いかと疑うくらいしか聞こえなかったのなら、そのまま聞き流して欲しい。
でも、そんな訳にはいかなかった。
「言ったよな…?」
「い、いって、ませ…」
「なぁ、言ったよな?」
「いって、な…」
「………言ってくれよ…」
「…え…?」
低く囁いたと思えば、抱きすくめられた。
「言ってくれよ、すきって。嘘でも良い、今だけで良いから…っ」
「せ、ぱ…?」
「好きなんだ、丸本」
息が、止まったかと思った。
先輩が?誰を?僕を?――好き?
ぶわりと体中を何かが駆け巡った。
それは信じられないという思いと…喜び。
身体はそれを顕著に表し、後孔に入っている先輩の熱を愛しげにきゅうきゅうと締め付けた。
「っ!…う…」
快楽に呻いて耐える先輩に重い腕をどうにか伸ばし、制服のシャツの裾を握る。
「丸本…?」
「すき、です」
「…!」
一瞬目を見開き、そして先輩は悲しげに微笑んだ。
「ん…ごめんな、ありがとう」
「ちが、」
「うん?」
「ちがう、んです。うそじゃ、ない…今だけじゃ…ない」
必死で言葉を紡ぐ。
嘘で言える訳が無い。ずっと、ずっと前から
「ずっと、せんぱいのことが、すきでした」
← →