小説 | ナノ
 チュンチュン、という雀達の囀りに窓からうっすら差し込む眩しい日差しに目が覚める。
 時計を見れば、もう11時を過ぎていたが今日は学校が休みだから構わない。
 もう一度、惰眠を貪ろうと布団を被り直したところで気が付いた。

「……あれ」

 俺ってば、昨日、三郎を襲ったんじゃなかったっけ。
 欲望のままに身を任せてたら三郎が起きちゃって。なんか、鬼畜な三郎に言葉攻めされちゃって。でも、ちゃんとキスとかしてもらって。
 いや、本当に飴と鞭の使い分けが凄いとしか言い様がない……。

「ってちげーよ!!」

 バッと起き上がって俺は頭を抱え込んだ。
 普通ならば、三郎が起きるなんて有り得ないはずだ。だって、晩飯に睡眠薬を混ぜたんだから!
 ぐっすり夢の中……のはずなんだけど、起きていて。しかも普通にエッチしちゃった。
 ……これは、もしかしたらもしかするんじゃないだろうか。
 だって三郎、最初は怒ってたけど嫌がっては無かったし、最終的にノリノリだったし。
 両思い。そうとしか考えられないよな、これは。

「っわぁー!」

 あまりの嬉しさに布団の上をゴロゴロ寝転び回る。
 実を言うとちゃんとした恋人っていうのは初めてで、胸がドキドキと高鳴る。
 エッチも良いけど、手繋いだりとかデートだったり色々しちゃうのかなぁ。
 もう想像するだけで頭がパンクしそうだ!
 ちゃんと向き合って三郎と色んなこと話し合いたいけど、たしか今日は委員会の臨時集会があると言っていた。
 だからとにかく今は、三郎の帰りを待とう。

* * *

 食卓に並べた皿が綺麗になっていく様子は嬉しい以外に言い表すことはできない。
 それも、好きな人が美味しいって言いながらなら尚更!
 俺は、今日の委員会であったという三郎の話を聞きながらニコニコする。三郎も気分が良いのかニコニコしながら話してくれて、すべての料理を綺麗に平らげると皿を運ぼうとする。俺はそれを疲れているだろうからと遮り、風呂を薦めて、三郎が風呂に入っている間に洗い物をすませる。洗い物が終わると同時に三郎が風呂から上がって、入れ替わりで俺が風呂に入る。
 風呂からあがれば、冷たい飲み物を三郎が用意してくれてて俺はそんな気の利くところにきゅんきゅんしながら有り難くいただき、二人でテレビを見ながら駄弁る。
 楽しい時間はあっという間で気付けば12を過ぎているもんだから、俺達はおやすみ、と挨拶を交わしてからそれぞれの部屋に戻る。
 よっこらしょ、とベッドに入り布団に入って今日のことを振り返ってみる。
 今日は本当に特別な一日だった。
 なぜなら、相変わらず三郎は格好良くて優しくて素敵で一緒にご飯食べて話して、って…………あるぇー?

「……いつもと同じじゃん」

 俺のその呟きは静かな部屋によく響いた。
 どうして? 昨晩あんなに熱い夜を過ごしときながら、いつもと同じというのはあまりにもおかしい。
 ちょっとぐらい恋人らしく、仲睦まじくイチャイチャしたりあるだろう! 三郎はそんなの恥ずかしがるタイプじゃないから、照れて普段通りに接しているという選択肢は無いし。
 一体、どうして。




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