小説 | ナノ
「……っは、ぁ」

 何も入っていないはずなのに、なんだか違和感を感じる。
 恐る恐る自分でアナルを触ってみたが少し柔らかい気がしたがきちんと閉じてあってホッとする。
 この年でオムツは冗談以外の何者でもない。
 俺が安堵の息をついていると、射精後の余韻から覚めた名賀がさっきよりも顔を歪めていた。

「おれっ、また、なかにっ……!」
「俺が勝手にしたんだから、気にすんなって」
「で、でもっ」

 名賀はぐずりながらも、俺に訴えかけてくる。
 俺が思わず、ため息をつくと名賀はビクンと震えた。

「あのさ、なんで俺がこんなことしたか分かる?」

 そう言うと、名賀は少し戸惑ってから首を横に振った。
 そして、びくびくしながら見上げてくる。その姿は捨てられた子犬のように怯えていて、その対象が俺自身だというのは心得ている。まぁ、少々行動が手荒だったし言葉も少なかったから仕方ない。
 俺は名賀の少し赤くなっている目尻に指を添えて、涙をすくった。

「俺は名賀が好きなんだよ。……まだ、自覚してから全然時間経ってないけど、さ。でも、そのちょっとの時間の間も何度も名賀を好きになった。知ってるか? 俺が何度もきゅんきゅんしてたの。いちいち可愛くて可愛くて仕方なかった。……だから、っていうのもなんかあれだけど。俺はさ、大好きな名賀に気持ち良くなってもらえるなら腹なんか壊しても良いんだよ。分かった?」

 ちょっと照れ臭くなって、ふざけたように笑って名賀の頭をぐしゃぐしゃ掻き回した。
 すると名賀が囁くようにして言った。

「……いです」
「ん?」
「ずるい、です」

 相変わらず、涙は零れていたがその顔には笑みが浮かべられていたので俺も笑った。

* * *

「……俺以外のこと考えないで下さい」
「あっ、あ、うあ! そっんなっ、あん、いっ、きな、り、うごくな、ぁっ」

 緩い動きからの突然の速い動きへのシフトに俺はのけ反る。
 向かい合いながら、という不安定な体勢のせいで危うく落ちそうになったが名賀がしっかりと腰を掴んでいたので危険は免れた。

「あっ、ん、はぅ、あっあっ、んあ」

 的確に中を突き上げてくるペニスに目眩がして目の前がぼやける。
 けれど、そんな視界でも改めて見ると男らしくなったと感じる。
 相変わらず、ふんわりとした王子様みたいな風貌だけど雰囲気が変わって、雄々しいというかなんというか。恋人の欲目かもしれないが、本当に格好いい。

「っあ! ら、らめ、いっしょ、やだぁ、ん!」
「どうして? 好きでしょう?」
「ひう!」

 乳首を容赦なく摘まれて、走る痛みに背中が竦む。
 でも、それをあやすように温かい舌で舐められれば気持ち良過ぎてたまらない。
 最初はすっごい初で俺が先導してたのに、今では逆になってしまっている。別に嫌じゃないけれど、さびしいというかなんというか……。

「もう、っ、俺にだけ集中して、ね?」

 そう言って名賀は、動きを止めて俺の瞳を覗きこんでくる。
 その泣きそうな顔が全然、変わってなくて俺は思わず笑ってしまい、さらに名賀の機嫌を損ねる。
 すると名賀の瞳の薄い涙の膜が段々、うるうるしてくるものだから俺は必死に笑うのを堪えて言った。

「ずっと、お前のことしか考えてないよ」

おわり



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -