小説 | ナノ
「痛かったら、すぐ言って下さいね」

 そう言うと名賀は、ゆっくりと指をいれてきた。
 痛くは、ない。けれどお世辞にも気持ち良いとは言えず、むしろ普段とは違う違和感が気持ち悪くて、俺はギュッと目を瞑った。
 そして、思わずシーツを握り締めるとそれに気付いた名賀が申し訳なさそうに言った。

「すみません。早く見つけますから」

 何を? そう尋ねたかったけれど、中でゆっくりと蠢く指に気を取られてそれどころじゃなかった。
 指たった一本だけで、こんななのに名賀のあれを挿れると考えると怖い。でも名賀のためなら、名賀が気持ち良くなれるなら。そう思うと怖さも薄らいで、我慢出来るどころか早く一つになりたいと思った。

「ん、ん……っあ!?」
「ここ、ですか?」

 中で指を折り曲げられた瞬間、ビリとまるで電流のような刺激が走った。
 何が起きたのか分からなくて目を見開いたままでいると名賀は何度も指を折り曲げて、確かめるように控え目に内壁を擦る。その度に、ちりちりとした刺激が体に響く。反射的に逃げ出したくなって、体を捩るとその反動で名賀の指がぐり、とある場所に当たって今までとは比にならない刺激、いや、快感が体を支配した。

「んやっ! やぁ、……あっ、なっ、にこ、れぇ、ん!」

 今までに経験したことのない強い快感に頭が真っ白になる。
 なんだか怖くて、すぐにでも指を抜いて欲しかったけれど、名賀は逆に指の動きを派手にして内壁をくすぐった。

「あっ! や、やぁ……。んあ、はっ、あっあっ、な、がぁ」
「村田先生、ここが前立腺です」
「あっ、んぅ、ぜん、りつせっ……ん?」
「はい。男同士でするときには、ここで気持ち良くなるらしいです」

 正直な話、尻に突っ込まれて気持ち良くなれるなんて思ってもいなかった俺からしたら寝耳に水な話だが、休むことのない名賀の指のせいで、何の反応も出来ない。
 ぬち、ぬちゅ、とローションを頼りにして蠢く指に俺はただ、声をあげた。

「んっんっ、は、あう、や、あっ!」

 気付けば、指は三本に増えていてより強く前立腺とやらを刺激してくる。
 絶え間なく与えられる快感に口をハクハクと動かしていると、ずるん、と指を引き抜かれた。

「ふぇ?」

 一気に訪れる喪失感に首を傾げる。
 どうしたんだろうか、とぼやける視界の焦点を合わせると、ぎらりと獣のような瞳をした名賀と目があった。

「ごめんなさい、村田先生……」
「え? あっ、ああっ!……ん、んぅ」
「はぁ……、ふっ」

 膝裏を掴まれたと思ったら、ゆっくりとゆっくりと名賀のペニスが挿入された。
 突然のことに驚く。その硬い肉が中に割り込む感覚は、痛みが大きかったけれど、微かな快感と、何より言い様のない幸福感によってそれは打ち消された。

「ん、あ……」

 俺の中で名賀のペニスがびくびくと震えるのを感じる度に、本当に一つになったんだと実感する。と、同時に今から訪れるであろう快感に胸が高鳴る。
 これで、あの前立腺をぐりぐり擦られれば――。想像するだけで喉が鳴って目が潤む。
 思わず請うように名賀を見つめるようと顔をあげると、名賀はギュッと唇を噛み締めて震えていた。

「……な、が?」
「…………っあ!」

 プルプルと体を震わせる姿には、何かを耐えているようで。自然と手を伸ばして、頬に触れると中に熱いものが注がれた。

「んっ! あ、んぅ……?」

 じんわり、と奥が熱くなる感覚に息がもれる。
 これは所謂中出しというやつなんだろうか、と中にある熱さに浮かされながら考えていると頬に雫が落ちてきた。

「ごめんなさっ……、村田せんせ、のなか、あったかくて、きもちよくて、がまっ、できなくて」

 俺がときめいたのは言うまでもない。



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