まだ、高校生だっていうのにこの妖艶さ。ふるふると震える睫毛の一本、一本すらもいやらしく見えてくる。
そんな風に俺がぼんやりと名賀を見つめたままでいると、ゆっくりと瞼をあげた名賀と瞳があった。
なんだか改めて見つめ合うと恥ずかしくて、顔を背けたくなる。けれど、実行する前に名賀の顔がサーッと青くなって、背けるわけにもいかない。
もしかしたら嫌すぎて気持ち悪くなったのかと思い、俺が声をかけようとした瞬間だった。
「す、す、すみません!!俺、かっ顔に!」
そう言って名賀は慌てて俺の顔を着ていたシャツを脱いで、拭った。
「………………嫌だったんじゃ、なかったのか?」
「へ?」
「いや、その……フェ、フェラが……」
「そっそんなことはありません! むしろ嬉しいというか、嬉しすぎたというか……!」
丁寧な手付きで、俺の顔を拭く名賀は青かった顔を段々と赤くして訴えてくる。
必死なそれに俺はむずむずとして、いつもはこんなに早くなくて、とか我慢出来なくて、とかまだ顔を赤く染めて訴えてくる名賀をギュッと抱き寄せた。
「……良かった」
本当に嫌じゃなかったんだ、と思うと安心して思わず名賀の肩に顔を埋めて言うと、名賀はあわあわとしながらも抱き締め返してくれた。
またそれが嬉しくて、すり、と頬を寄せると名賀が困ったようにそっと俺を引き離す。意図が読めなくて目をパチクリと瞬かせていると、名賀は少しためらってから言った。
「そんなに可愛いこと言わないで下さい……」
もう、と名賀は恥ずかしそうに視線を外す。
どこに恥ずかしがる要素があったのか分からなくて、頭にクエスチョンマークを浮かべていると名賀はため息をついてから、今度は俺がします、と断言して俺はゆっくりと押し倒された。
「え。なっ名賀! 俺はもう良いって」
「っ駄目です! ……先生、まだいってないじゃないですか……」
「で、でも、な」
このままでいくと、恐らく名賀は俺にフェラをする気だ。
俺が名賀にするのは全く問題ないのだけれど、逆は駄目だ。名賀を汚してしまうし、なんだか申し訳ない。
けれど良い言い訳が思い付かなくて、しどろもどろしていたら名賀がそれじゃあ、と口を開いた。
その瞬間、俺はやった! と喜んだけれど、続いて出てきた、一緒に気持ち良くなりましょうという言葉の意味が分からなくて、ポカンとした。
え、え。と俺が慌てている間に名賀はどこからだしたのか、ローションを手のひらに広げて擦り合わせている。展開についていけなくて、その光景をぼんやりと眺めていたら、ローションまみれの名賀の手のひらは俺の股間、といっても奥の方。つまりは尻に伸びてきたのだ。
「!!」
ぬる、とした感触が尻に伝わる。冷たくはないけれど、俺は冷や汗がわき出てくるのが分かった。
「ちょ!」
「……嫌ですか?」
「うっ」
男同士でするには、そこを使うとは知っていたし、多分俺が所謂女役の立場にまわるのは覚悟していた。だけど、名賀に触らせる気は無かった。
自分である程度ほぐしたらあとは名賀に気持ち良くなってもらえれば、と。まさか、名賀に慣らしてもらうなんて。
そんなところ汚い、恥ずかしい、嫌だ! そう叫びたかったけど、熱に浮かされた瞳でうるうると見つめられると言葉がつまる。
さらに、お願いだから……と切ない声色で囁かれたらノー! と俺が名賀に言えるわけがない。
「…………嫌だったら、すぐにやめて良いからな」
諦めて、そう投げ捨てると名賀はホッとしたように笑ってから、ありがとうございます、と礼を言った。
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