「っあ!」
倫也が蜜樹のペニスを激しく吸い上げ出したのだ。
じゅ、じゅる、と先走りを啜る音をたてながら倫也は口を窄めて、蜜樹を追い立てる。先ほどまでの、丁寧な舌遣いとは違った荒々しいそれに蜜樹は息を荒くして目を瞑って強い快感をやり過ごそうとする。
「んっ、あ……倫也さっ、まっ!」
しかし、倫也が咥えきれない部分を手で掴み容赦なく扱くものだから抵抗は空しく、蜜樹は呆気なく達して倫也の口の中に精液を吐き出してしまった。
そのまま蜜樹が腰を震わせ、全て出し尽くすと倫也はゆっくりとペニスから唇を離す。その端からは飲み込めきれなかった精液が零れていて、蜜樹は射精後のぼんやりとした思考の中からハッと目覚め、慌てて倫也の唇を指で拭った。
「すみません、苦かったでしょう?」
「……まぁ、苦かったけど嫌いじゃねぇよ」
そう言って蜜樹の手をはらう倫也の頬はほんのりと赤く染まっている。
その可愛らしい姿に蜜樹がだらしなく顔を緩めると、それが癇に触ったのか倫也は眉間に皺を寄せた。
「……笑ってんじゃねぇよ、アホ」
「ふふふ」
「だから笑うなって!」
声を荒げて、さらに眼光を鋭くする倫也に蜜樹は怯むことなくむしろ、嬉々として間をつめた。
反射的に倫也がのけ反ろうとするのを阻止して唇を重ねる。
舌を潜り込ませて、好き勝手に口内を蹂躙すれば最初は拒否するように固まっていた倫也の舌が段々と蜜樹の舌に絡み合ってくる。
そのまま蜜樹は、放置しぱなしだった倫也のペニスに手を添え、ゆっくりと高みへと導いたのだった。
* * *
そよそよ、と風に揺らめく木々に倫也が目を細めていると後ろから伸びてきた大きな手のひらが倫也の頬を撫でた。
「こんなに冷えて。もう換気も十分でしょう」
そう言うと、蜜樹は振り向いた倫也と視線を合わせることはなく、さっさと窓を閉めると、まるで逃げるかのようにエアコンをつけるためにドアの方へと歩く。
「シーツ、替えときましたから。汚れたのは今洗濯してます」
壁に固定されてるリモコンで温度を設定する蜜樹のいつもより小さく見える後ろ姿に倫也はため息をついた。
「……言っとくけど、晋汰はあくまで従兄弟だ。それ以上でも以下でもない」
「!」
「だから、子どもみたいに嫉妬なんかすんな」
そう吐き捨てると、倫也は目を見開いて振り返る蜜樹などお構いなしに、椅子に座って資料の整理を始める。
「あと、後悔するぐらいなら最初っから襲うなっつーの。ムカつくけど、晋汰に何かあったとしてもクソ幡多が対処するだろうし、もし追いかけたとしても多分、俺邪魔者だっただろうかんな」
資料に目を通しながら、倫也は饒舌に語る。
その内容は、段々と弦矢に対する鬱憤へと移り変わってきていたが蜜樹は震える手をギュッと握り締めて目を細めた。
いつもそうだ。倫也は淡白で優しい人、とはお世辞にも言えないし、手が出るのが早くて口も悪い人だが、いつだって自分をきちんと見ていてくれる。
だから、いつも諦めたように蜜樹を受け入れてくれるのは面倒臭いからではなくて、誰よりも深く蜜樹の心情を理解しているからで、口ではああ言っているが晋汰のことが心配でたまらないはずだ。けれども、蜜樹のことを思ってその気持ちを押さえて、蜜樹を甘やかそうとする。
そんな倫也を目の当たりにして蜜樹は、胸の奥がじんわりと温くなると同時に強く締め付けられる。
「…………敵わないなぁ……」
思わず、洩らした言葉は弦矢の悪いところを挙げるのに必死になっていた倫也には聞こえなかったようだ。
蜜樹は、ふっと笑みを零して倫也を抱き締めるために足を進めたのだった。
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