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- ナノ -
 
07


ローくんに振り回され(連れまわされ)たりしながらもなんとか入学式から一ヶ月経った。
ローくんがいつも近くにいるせいで友達が全く出来なかった私にも変化があった。


「お、いたいた!リーシャ〜!」

「あ、ボニーちゃん」

最近仲良くなったジュエリー・ボニーちゃん。

学校では“大食い”なんて言われている。

「今日はトラファルガーのやつが見当たらないな」

ボニーちゃんは周りを見回した。

「ローくんは多分サボりだと思うよ」

「おいおいまたかよ」

ボニーちゃんは呆れた顔をする。



私はこれこそが私の欲しかったスクールライフだとボニーちゃんを見ながら嬉しくなった。

「ん?どうしたんだ?」

ボニーちゃんが私の顔を覗きながら聞いてきた。


「えっとね……ボニーちゃんと友達になれて嬉しいなって思ってたの!」


「あははっ……そうだなぁ、あん時は腹減っててお腹すいたーって言ってたら近くにいたリーシャがアメくれたんだったな?」

「うん!それからだよねよくボニーちゃんと喋るようになったの」

「ウチは隣のクラスだからいつも一緒っていうわけにはいかないからな……あ!!」

「どうしたの?」

「もうすぐ学食の売店で限定品の“幻のメロンパン”が発売される時間だ!つーことで、じゃあなリーシャ!」

ボニーちゃんはそう言うと走って売店に言ってしまった。

「ボニーちゃんあんなに食べてプロポーションいいなんて羨ましいな……」









「お前も十分細いと思うがな」

「うわぁっ!」

一人だと思っていたら後ろにいつのまにかローくんがいた。

「ククッ……驚きすぎだ」

「後ろに立ってたからだよ!」

私は少し怒ったような顔をするとローくんはまた笑った。
というかサボるのやめたのかな?
私がそんなことを思っているとローくんは笑ったまま私の頭を撫でて行ってしまった。
結局なんだったんだろう……。
私は疑問を残して自分の教室に戻った。




その日はいつものようにローくんと登校していた。

「結構学校にも慣れてきたね」

「まぁな、ところで今日は何処へ行く?」

「えっ!?また?」

「あたりまえだ、これでもまだ足りねェぐらいだ」

「………」

彼が言っているのはローくん曰く“デート”のことだ。
ちなみに私はデートだなんて一度も思った事はない。
ローくんはほぼ毎日のように放課後私を捕まえ…いや、何処かへ連れていく。
でも私を今一番頭を悩ませているのは――。

「早く言わないとキスするぞ」

というニヤリという笑み付きの言葉だったりする。

「ま、また?!えっと……じゃあ……た、鯛焼き屋さんに……」


「フッ…わかった」

彼は笑うと私の頭をクシャリと撫でた。

「うぅ……」

私は恥ずかしくなり歩くのを速めた。
その様子を見たローくんはクツクツとおかしそうに笑っていた。






教室に入るといつものように挨拶をする。


「リーシャおはよう!」


「あ、ボニーちゃんおはよう!」

「朝から何弁当広げてんだジュエリー屋」

「あぁ?てめぇには関係ないだろーが!」

「誰かさんが早弁すると誰かの弁当を食うから関係ないわけがないだろ?」

ローは馬鹿にしたように笑う。

「なんだとクソファルガー!もういっぺん言ってみろ!」

「フン、二回も言わなければわからないか?ジュエリー屋」

「なんだと、このっ!」

二人の空気が険悪になってきたので私は慌てまぁまぁと宥めた。
なんとか二人は引いたけれどまだ睨みあっている。
仲がいいのか悪いのかよくわからない二人に苦笑いしながらも私は今日も平和だな……と心の隅で思った。




放課後になるとローくんと鯛焼き屋さんに行った。

「カスタード一つ」

「はいよっ!」

鉢巻きを巻いたおじさんが鯛焼きをズイッと差し出した。
ローくんがそれを受け取ると私に鯛焼きを渡す。
最初自分の分は自分で払うと言ったのだがローくんが、

「これ以上何か言ったらキスする」

と言ってきたので私は何も言えなくなってしまって今にいたる。
最近彼にいいようにされていると感じるのは私だけではないと思う。


「ありがとうローくん」

「あァ」

私はそういうとローくんの分の鯛焼きがないことに気がつく。

「ローくん鯛焼き食べないの?」

「まぁな……」

彼の言葉を聞いて私は少し考えたあと自分の鯛焼きを二つに分けた。

「はい」

「……!」

ローくんは驚いた顔をしながら私と鯛焼きを見ていた。

「一人で食べるより二人で食べた方がおいしいから……」

私が笑いながらそういうとローくんは見たことのない優しい顔をしながら鯛焼きを受け取る。
ローくんのその顔を見た瞬間ドキリと心臓がなったのは内緒にしておこうと思った。


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