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- ナノ -
 
01


私が彼を初めて見たのは入学式の時だった。


「おい、あっちで喧嘩してるヤツがいるんだってよ!」

「マジかよ?!見に行こうぜ!」

入学式に行くために歩いていた私は近くにいた男子がそんなことを言っていたのを聞いて少し興味が沸く。
だから男子の後をこっそりと付いて行った。
その時の私の行動に自分でも驚いていたのを今でも思いだす。
普段は厄介事なんかに足を突っ込まないのに何故かその“喧嘩”という言葉にひどく惹かれてしまったのかもしれない。


――ザワザワ

やじ馬ができている場所へ行ってみるとすでに喧嘩は終わっていたようで数人の男子が倒れている中心に一人の男子だけしか立っていなかった。
すると私の横にいた女子が黄色い声を出しながら話しているのが聞こえた。

「あの人超かっこよくない!?」


「うんうん!あの人って確か北中学出身の…」

「あっ、私もその人の事なら聞いたことある!名前はトラファルガー・ローだよね?!」

「そう!噂通りかっこよすぎ〜!」

彼女達は目をハートにしながら会話を続けていた。

「トラファルガー・ローって……」

私にもその名前には聞き覚えがある。
何故なら私が中学生の時トラファルガー・ローのファンだという友人がいて彼を見てみたいという友人が私を引っ張って北中学まで行ったことがあった。
その時は顔は見ていなくて、後ろ姿だけだったけど……。
その友人が彼、トラファルガー・ローの情報を喜々として語っていたのを思い出す。

「そういえばさ、私あの噂気になってたんだよね」

「何の噂?」

私は再び女子達の会話に耳を傾けた。


「ほら、すごい噂になったじゃん?」

「あ、もしかしてトラファルガー・ローのシンデレラストーリー説?」

「そうそう!あの時の北中学に来る女子の毎日の押しかける人数がヤバかったらしいよ」

今彼女達が話ている話はまたまたトラファルガー・ローのファンである友人がすごく興奮しながら語っていたのを思い出した。




回想――。



「あ、リーシャ!ちょうどいいところにいた!」

「どうしたの?もう北中学には行かないからね」

私が嫌な表情を友人に向けると相手は首を大袈裟に降った。

「ちがうわよ!また新しいトラファルガー・ロー様の情報をゲットしたのよ!」

「またぁ?どうせいつもと一緒で新しい彼女ができた、とかでしょ?」

「フフッ……実は違うんだなぁ〜」

「……」



「ちょっ、そんな目をしないでよ!」

「……それで?」

「よくぞ聞いてくれました!なんとなんと、あのトラファルガー・ロー様が女遊びを全くしなくなったんだって!」

「それはまた…なんで」

私はその時かなり驚いていた。
なぜなら、友人から聞いていた彼は女遊びが激しいと言っていたから。

「う〜ん、私が聞いた情報によると本命ができたからだって」

「本命?」

「つまり好きな人ができたからとかでその本命を探しているみたいよ……」

「探しているってことは相手の子は探されていることを知らないってことかな?」

「そうなるんじゃない?その噂のせいで今の北中学に押しかける女子達が多いっていうし……」

「え……」

それは…凄そうだ。
考えただけでも顔も見たこともないトラファルガー・ローが可哀相になってきた………。

「女子達が自分こそがトラファルガー・ロー様のシンデレラと思ってるって事ね」

「シンデレラって?」

「この噂に付けられた名前が“トラファルガー・ローのシンデレラストーリー説”っていうんだけど、この噂がシンデレラの話と似てるでしょ?」

「確かに…」

私は苦笑いしながら頷くと友人は私の手を掴んだ。

「?…何この手は?」

「今から北中学にいって私達もシンデレラのガラスの靴を履きに行くのよ!」

「!」

もちろんガラスの靴なんて存在しないから遠回しにただトラファルガー・ローを見に行きたいがための口実なのだろう。
もちろん私は全力で友人の魔の手から逃げ切った。


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