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01


「完成だ……」

とある海賊団の船長室から独自の笑みを漏らす人物がなにやら怪しげなビンを掲げていた。



***



「リーシャ〜!」

「は、はいっ、今行きますっ……!」

今日も今日とて交わされる賑やかな声。
ハートの海賊団の船員ベポと現在も海兵として誘拐されたままのリーシャ。

「今日コックがスコーン焼いてくれるって!」

「わぁ、それは美味しそうですね……!」

「じゃあ食堂に行くか」

話しが盛り上がっているところに現れた最近変態が際立っている男。

「え!トラファルガーさん?」

「キャプテンも食べるの?珍しいね」

驚く一人に対しベポはニコニコと無邪気に笑う。

「フフ、行くぞ」

止まっていた足を動かす船長にベポ達も歩きだし食堂を目指す。
食堂に着くとちょうどコックがスコーンをテーブルに置いている最中で、食堂の周りを見ればちらほらと船員達も席に着いて談笑していた。
リーシャ達を見ると船員達が「船長おはようございます」と、挨拶をしてくる姿にもうこの光景は見慣れてしまったと、複雑な気持ちになる。
元々、いや今でも海兵だがローに誘拐され、この船に乗っている現役海兵なのだ。
本来海軍に身を置いている自身がローと出会ったのは、リーシャが襲われているところを助けて貰ったということから始まる。
最初は「好きだ」とか「一目惚れ」とか言われて、狙ったかのように現れるローに驚いた最初の島。
転勤で違う島に移動した時はもう二度と出会うことがないと思い、しかし再開した次の島。
そして自分のありえない気持ちに気付き移動を希望して、いざ船に乗って島に別れを告げた後、突然潜水艦が現れて、ローがリーシャを連れ去り、いつの間にか攫われた一ヶ月前。

というわけで今に至るというわけなのだ。
自分ただの海兵で弱いし、なんのメリットもないのに好きだと言われる意味が今だ分からない。
そんな気持ちでローを横目でチラリと見ればスコーンを皿に盛ってジャムやマーガリンなどを横に乗せ自分の前に置いた。

「え?」

「食え」

「あ、あの……自分でできるんですけど……」

そう言えば聞こえていないと言う風に彼は持っていたフォークでサクッとスコーンを四つに割るとジャムを付けリーシャの口の前に差し出す。

「えっ!?」

「遠慮するな」

「えええ遠慮なんてっ!いいいです!」

断ってもなお全く手を引く気配がないローにリーシャは赤面しながら押し問答。

「相変わらず船長押すよな」

「引くことも必要だと思うが」

「引いたらなんもアクション起きないだろ」

「むしろそっちの方が助かる」

とリーシャ達を眺めながら話すシャチとペンギン。
ベポはその横でスコーンをぱくぱくと食べている。

「スコーンにジャムなんていらねェくらいあいつら見てると甘く感じてこねェ?」

「あァ」

シャチの言葉にペンギンの他に食堂にいる船員は全員こくりと頷いた。

「ちょっと……あ、の」

「ほら食えよ」

「え、えん……むぐ!」

リーシャの口にスコーンを入れるローに船員達は、

((((虐めてるように見える……))))

と思うのだった。







「こっちにもあるよー」

「本当だな、見事なものだ」

「凄いですね……」

リーシャとハートの海賊団は春島の『ブロッサム島』と言われる桜が有名な場所にログに導かれ停泊していた。

それにしても、と桜の数が膨大で並木がずらりと道を作っている風景に胸を打たれるような気持ちになる。

「花見でもするか」

「マジですか船長!!」

ローがリーシャの手を握ったままそう呟けば嬉しそうに目をキラキラとさせるシャチにリーシャは首を傾げた。

「はなみ?」

「花を見ながら宴をして楽しむことだよ!」

ベポが答えてくれてリーシャはなるほど、と声を上げればローがシャチに「船員全員に伝えてこい」と指示を出す。
それにシャチはスキップしそうな勢いで駆け出していく。

「酒が飲めるからな」

「そうですね……」

シャチの後ろ姿を見送ったペンギンがそう漏らせばリーシャは苦笑いするしかなかった。
そして船員全員が集まった昼時、始まった宴。
どんちゃん騒ぎとはまさにこの事で皆はお酒をのみ交わしながら踊ったり歌ったり、見ているリーシャまで楽しくなり、笑った。
全員が集まる前に桜の木の下にシートを引いた時には、すでに周りには他の人がシートを引いているのが目につく。
どうやらここは花見スポットらしく宴が始まる時にはたくさんの人が花見を楽しんでいて驚いた。 そんなまったりとした雰囲気の中、似つかわしくない感触がリーシャの肩に乗り反射的に肩を見ればそこには手がありとても普通とは掛け離れた指先の『DEATH』という刺青。

「あの、トラファルガーさん?」

「あ?」

まるで素知らぬ顔のままこちらを向く彼の指先を見る。

「ど、どかしてもらっても?」

内心ばくばくな心臓に声が上擦ればローの手は妖しく肩を上下しだす。

「無理なお願いだ」

「っ……!」

耳元に息がかかる距離にピクリと体が反応する。


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