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ドレーク少将の元部下だった事を告白したエリゼ。
彼女は目を閉じて唇を引き結ぶ。

「私は、海兵です。海賊は嫌いです」

そう口にするエリゼは悔しげに目を開く。

「でも、でも……気を抜いた途端、自分がとても惨めになります」

「そんな事は……」

「いいえ、私が頼り無いのでドレーク少将は置いて行ったのです」

彼女はドレークを恨んでいるように見えた。
けれど、どうやら心の底では共に居たかったのだと思う。
大切な人、憧れの人。
置いて行かれるのはとても辛い。
リーシャもローが七武海になってから、遠い人だと感じてしまっている。

「何故海賊になったの?何故海兵を辞めたの?何故、何故……」

エリゼの身体が震えて睫から光る物が流れ出す。

「わ、私を、置いて行ったのですかっ」

その目から大粒の涙を溢れさせたエリゼをそっと抱き締める事しか出来ない。

「ドレークさんは、きっと優しい人なんです」

思った事を口にする事しか出来ない。

「分かります。何となく。上司の部下だった貴女はとても優しい。私に声を掛けてくれた。私はとても嬉しくて心が暖かくなりました……貴方は優しさを知っている。その優しさは、誰から教わったものか……感じるんです。あの、間違ってたらすみません」

出来るだけ何か言おうとして、空回りしてしまっている。
恥ずかしくなって謝るとエリゼの鼻を啜る音が聞こえた。

「いいえ、お陰で昔の事を思い出せました……ドレーク少将は……人想いで……私の事を女だと蔑ろにせずに、一人の人間として、扱ってくれた……」

エリゼは顔を上げるとリーシャへ顔を向ける。

「私はずっと迷っていました。今の海軍は私の居る場所なのか……ドレーク少将は海軍を見放したんじゃないのか……きっと、彼は彼なりに違う見方で海賊へとなったのだと……言い聞かせてきました。けれど、思うだけではいけないと今、思いました」

エリゼは立ち上がると、ローの所へ行くと言って出て行く。

「えっと?」

訳も分からずチンプンカンプンだ。
彼女が帰ってくる前に寝落ちしてしまっていた。







目が覚めると彼女は隣に居なくて、いつの間にか海軍の本部にも着いていた。
昨日はまだ本部には行かないと言っていた事を思い出しながら食堂へ向かうと、ローが居てベポが隈を目の下に作っていたので驚く。
その隈はどうしたんだと聞くとベポが昨日の夜、急にローが進路変更をしろと言ってきて徹夜したのだと言う。
ローの方を向くと彼は嬉しそうにあの女は今本部に居る、と告げられ首を傾げる。

「やる事が出来た、と言っていた。あの目は何か仕出かす目だった……ククク」

ローはエリゼをあまり歓迎していなかったに、この変わりように疑問ばかりが湧く。
程なくして、エリゼが戻ってきた。

「え!そ、その格好!」

彼女は海兵の制服を着ておらず大荷物を抱えて挨拶に来た。

「本日付けで七武海トラファルガー・ローの監視を降ります。お世話になりました。そして、本日より海兵を辞職いたしました事をご報告いたします」

エリゼらしい報告に皆目をしばたかせて大きな声で「えー!?」と叫ぶ。
リーシャも一緒になって叫ぶとエリゼがこちらへやってきて握手をしてくる。
流れに任せて握手をすると「ありがとう」と言われた。
何もしていない、と思うが彼女の晴れ晴れとした顔を見たら言えない。

「彼の後を追おうと思います。いつになるかは定かではありませんが。ここで何もしないよりは、私が私でいられるような気がします」

そして、彼女はお別れだと黄色い潜水艦に背を向けて歩き出し、ハートの船員達も見えなくなるまでエリゼを見ていた。


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