×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
 
41


「トラファルガー・ロー。本日付けで貴女の監視官になったアルメロサ・エリゼです」

「何故余分な女が付いてきている……」

まさか監視官が二人も付く等予想して居なかったらしいローは戸惑った様子でエリゼを見る。
リーシャは萎縮しながら見ていると彼女はローを見てキッと睨む。
そして、驚く事に七武海になったばかりのローへ文句を言い出した。

「貴方の様な男に彼女と二人きりで会わせる訳にまいりません。私も監視官として同行させていただきます」

「鬱陶しい女だ……邪魔になる」

そうゾッとする目で見下げるローに背筋が凍る。
しかし、エリゼは全く怯まない。
同じ女性として、とても勇ましいとさえ思う。
羨ましい、こんな女性になりたい。
そう思う様になってきた。
話しを聞いてくれる包容力も憧れだ。
待望の眼差しで見ているとローが溜息を付いて期限付きだ、と条件を出す。
あまりハートの海賊団の内情を見られるのは好ましくないだろう。
ローにそう言われてエリゼは頷いた。
そして、こちらを向くと「必ず守りますから」と力強く言われた。
何から守るんだろう、と首を傾げて食い違っている間を修正する間もなくローが動く。

「寄る島がある」

「ええ。何処までも付いて行きます」

聞いている部分はまるで忠誠を誓う相手に対する言葉。
だが、現実は海賊を海兵が見張る、という居心地の悪い状況。
ローの舌打ちが微かに聞こえて苦笑せざるおえなかった。
ローは仲間達の所へ戻ると監視が付く事や監視官が二人居る事を説明する。
てっきり一人だと思っていた仲間達は当然困惑。
島に着いてもベッタリ監視しているエリゼ。
それに対して流石に青筋を立て始めたローをフォローする役目がリーシャ、と自然となっていく。 
エリゼは当初は近寄ってはいけないとローから引き離していたが、ローが何もしてこない事を知ると緩くなった。
このままでは窮屈そうだ。
エリゼもエリゼで全く海賊船で気を緩ませない。
ここ数日、ローが朝から同じベッドに居ない生活に違和感を覚える。
覚えてしまっては駄目だと赤くなるが。
夜になると彼女はベッドに寝ないで扉の外に座って、この部屋に不届き者が入らないか見張っているのだ。
そこまでと思うが、彼女からしたら敵の船も同然なのだろう。
もうリーシャは馴れてしまい警戒心等無い。
あってもどうこうする術を持たないのだが。
二人の監視が付いて一ヶ月に迫った日、ローの期限とやらが近付いてきた事を彼女は毎日言っている。
何か考えている様子で、難しい顔を浮かべて悩んでいるようだった。
どうしたのだと聞いてみても曖昧にはぐらかされる。

「メイスさん、ちょっと良いですか」

「あ、はい……」

一つの部屋にベッドがあって二つある物を一人ずつ使わせてもらっている。
お風呂を上がった時に呼び止められて隣に来るようベッドの端に手招きされた。
何だろうと座るとスプリングがギッとなる。 

「この一ヶ月、色々と見させてもらいました」

「……はい。どうでしたか?」

「驚く程清潔。驚く程皆男だらけですね」

「それは、まあ……」

男だらけなのは仕方のない事だ。
笑って答えるとエリゼは仄暗(ほのぐら)い室内で俯く。

「海賊がどんなものかは知っていたつもりですが、こういう所もあるのですね」

この部屋を与えられた時、彼女は驚いていた。
海賊は野蛮、駆除するべき存在だとは海軍の教えだ。
きっと、討伐する時も相手にする時もそんな考えで仕事をしているのだろう。
彼女の一ヶ月を見てきたリーシャでさえその律儀さと真面目さには驚く。

「……私には、嘗(かつ)て憧れていた人が居ました。その人を目標に鍛錬を積んで彼の部下となれました」

余程その人が良い人なのか、僅かに彼女の頬が緩む。

「毎日がとても有意義でした。憧れていたあの人の下で働けて。私は周りから朴念仁、鉄仮面、女の癖に、と時々言われておりましたが、彼の下に付けた事でそんなものは何とも思いませんでした」

彼女の結構重い現実の嫌味にどういう顔をすればいいのか分からなくて困る。

「しかし」

そこでエリゼの幸せそうな顔が、苦痛に歪むように陰が出来る。

「彼が低俗な海賊へと堕ちた瞬間、私の視界は黒く塗り潰されてしまいました」

「え?」

その言葉にある事件が脳裏に浮かぶ。
海兵、海軍のスキャンダルは耳に入りやすい。
彼女の年齢と照らし合わせてここ二、三年以内に起きた事を思うと相手が分かってくる。
ローも話していた事を思い出す。
シャボンディ諸島で会ったと。

「その人ってもしかして……」

「ええ。この船の船長トラファルガー・ローがルーキーとして名を馳せた“最悪の世代″と同じく、ルーキーとして新聞を賑わせた……X・ドレーク少将、その人です」

「!」

まさか、と言う思いで聞いたその事実に思っていたよりも衝撃を受けた。


prev next
[ back ] bkm