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「ううっ……うっく……っ……」

「もう大丈夫です。ここは安全ですからね」

女性の海兵が訳知り顔で慰めてくれている。
こんにちわ、絶賛子どもの様に泣いている海兵(ここ重要)のリーシャです。
泣いている理由を辿れば理不尽な目に合ったと言わざる終えない。

『もっと泣け』

『俺を恐怖と認識しろ』

それがロープで縛ってきたローの言葉だった。
あまりに唐突で混乱したし、頭も真っ白になったのだ。

(何でいきなりこんな事……トラファルガーさんは私の事が好きだなんて、大嘘だったんだ)

答えはそれしかなかった。
連れ去る時も返す時も勝手だ。
悲しいのに、彼の事を完全に嫌う事は出来なかった。
自分も大概だと思う。
女海兵は自身よりも年上に見え、それに気が緩む。
相手が話していたのを聞くと、カウンセラーも兼ねるので、と言われ内心ハテナでいっぱいだった。
別に病んでいないし、悩みなんてない。

「海賊に拉致されてしまった海兵というのは滅多にいませんで上手く対応出来るかあまり自信はありませんが……私で良ければ捌け口になりますよ」

まるで子どもを見守る人の目にハッとする。
リーシャは被害者で、社会的にはカウンセラーが必要な状態だと思われているのかもしれない。
有り難いが必要の無い事だ。
眉を下げて困っているとカウンセラーの女性は良々と頭を撫でる。
この人まで……と遠い目をする。
一体己の何が頭を撫でさせるのか聞きたい。
でも、聞くと大人としてのプライドやら自信が粉々になる気が凄くするので聞かない事にする。
それよりも、ローの方がとても気になる。
それを聞いて、果たしてちゃんと話してくれるのかと心配だが、意を決して聞いてみた。

「あの、トラファルガーさんは一体海軍へ何をしに来たのですか……?」

「え?……聞いていないのですか?」

「はい。私は話しを聞かれない様に塞がれていました(耳を)」

そう口にすると彼女の同情の目が一層強くなった気がした。

「塞がれて(監禁)いたのですか……さぞお辛かったでしょう……」

この間に凄まじい誤解が生じていたが、互いに気付かないままである。
それに同情の目が初めから深かったのはロープでぐるぐる巻きにされていたからでもあった。

「そうですね、海賊トラファルガー・ローは七武海の申請を要求しました」

(え?)

「それは……初耳です」

唖然とした。
まさかローがその立場を欲していたなんて。

「ですが、だからと言ってあの海賊と貴女を鉢合わさせる事なんて絶対にさせませんからね」

きっと彼女は海賊が凄く嫌いな人なのだな、と思った。
そんなに被害者と加害者を合わせたくないのかな、と一人納得。
ローの七武海の加入は果たして受理されるのか。
そして、日も浅い内に驚きの急展開があった。








「彼女をトラファルガー・ローの監視役に!?……一体何を考えているのですか!彼女は酷い目にあった被害者なのですよっ!」

今にも上司に突撃していきそうなのはカウンセラーとして傍に居てくれる女性。
同じ海兵のアルメロサ・エリゼ。
なんでも、何年か前までとても優秀な海兵の下で訓練を積んだという。
ローによりロープに巻かれた状態から彼女と接しているが、とても過保護なようだ。
こうしてリーシャの代わりに怒ってくれている。
落ち着いて、と言えるような余裕はリーシャにも今はない。
何故なら、冒頭の言葉通り、王下七武海へと正式に加入となったローの監視役として自身に白羽の矢が立ったから。
立ったと言うより、ロー本人からの指名だと言う。
まさかそんな要求をしてくるなど思いもよらなかった。
ローが何を考えて自分を海軍へ返したのかも七武海へ加入したのかも全てが不明なままだ。
胸にモヤモヤとした物を抱えたままではあまりに後味が悪い。
だから、

「分かりました」

「!?……メイスさん!貴女……!」

エリゼは驚いた後に苦渋の表情を浮かべる。

「やはり、弱みを握られているのですねっ」

「え!いえ、そんな事はありません……私に出来る事なら……それが命ならば私は従います」

「っ……!貴女がそこまで精神を犯されていたなんて……私は、貴女を必ず守ります!」

(守る?精神?え?分からなくなってきた……)

何故か彼女との間に誤差があるような気がする。
それに、守ると言っても何から守るのかも疑問だ。
正式にロー付きの監視役兼補佐になったリーシャは更に混乱をしてしまった。


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